お知らせを表示するにはログインが必要です。このエリアでは、楽天市場でのお買い物をもっと楽しんで頂くために、あなたの利用状況に合わせて便利でお得な情報をタイムリーにお知らせします!
ようこそ 楽天市場へ

茜色の帰り道、サクラと私の秘密と消えた少女 読み物

公開日:2025/03/11 更新日:2025/03/24
茜色の夕焼け空の下、私はサクラのリードを握り、いつもの散歩道を歩いていた。40代の私にとって、この時間は日々の喧騒を忘れ、サクラとの絆を深める大切なひとときだ。 サクラは、保護施設から引き取ったばかりの中型犬の雑種。淡い桜色の毛並みが夕日に映え、その瞳はまだ少し怯えている。けれど、私には優しく尻尾を振ってくれる。過去に何があったのかは分からないけれど、その瞳の奥には、人を信じたいという強い光が宿っていた。 私たちは、秘密の花園へと続く抜け道を歩いていた。細い路地を抜け、小さな公園を横切ると、そこにはひっそりと花壇が広がっている。春には色とりどりの花が咲き乱れ、私たちだけの特別な空間になる場所だ。
花壇に着くと、サクラは嬉しそうに花の香りを嗅ぎ始めた。私はベンチに腰を下ろし、サクラの愛らしい姿を見守る。すると、サクラは一輪の黄色い花をくわえ、私の足元にそっと置いた。 「ありがとう、サクラ」 私は花を受け取り、サクラの頭を撫でた。サクラは満足そうに私の膝に顎を乗せ、夕焼け空を見上げている。その姿は、まるで絵画のようだった。 ふと、サクラとの出会いを思い出した。保護施設の隅で震えていたサクラ。その瞳に惹かれ、家族に迎えることを決めた。あれから数週間、サクラは少しずつ心を開いてくれるようになった。 「サクラ、これからもずっと一緒にいようね」 私がそう呟くと、サクラは顔を上げ、私の目をじっと見つめた。その瞳には、言葉では伝えきれないほどの愛情が溢れていた。
その時、サクラが突然立ち上がり、花壇の奥に向かって吠え始めた。普段は大人しいサクラが、こんなに激しく吠えるのは初めてだ。私はサクラに導かれるように、花壇の奥へと進んだ。 そこには、小さな女の子が蹲っていた。女の子は怯えた様子で、顔を伏せている。声をかけても反応がない。私はそっと女の子に近づき、肩に触れた。 「大丈夫?何かあったの?」 女の子はゆっくりと顔を上げた。その顔は青ざめ、目には涙が浮かんでいた。 「私、迷子になっちゃった…」 女の子は震える声でそう言った。私は女の子を落ち着かせ、話を聞いた。女の子は近くの公園で遊んでいたが、一人になってしまったという。 私は女の子の手を握り、サクラと共に公園へと向かった。公園には、心配そうな顔をした女性が立っていた。女の子の母親だった。
母親は女の子の姿を見つけると、駆け寄り、強く抱きしめた。 「本当に心配したんだから!」 母親は涙ながらにそう言った。女の子も母親の胸で泣きじゃくっている。 私はサクラと共に、その場を後にした。帰り道、サクラはいつもよりゆっくりと歩いていた。私もサクラのペースに合わせ、茜色の空の下、静かに家路を辿る。 サクラと秘密の花園、そして消えた少女。今日起こった出来事は、サクラと私の絆をより一層深めてくれた。明日もまた、サクラと一緒に、この道を歩こう。
読み物シリーズ