自分のクルマに最適なエンジンオイルってとても迷いますね。世の中にはたくさんのエンジンオイルブランドが存在していて、世界中から有名無名のエンジンオイルが輸入されていたり、日本国産ブランドもたくさんあります。ひとつのブランドの中にも、ベースオイルの種類や粘度、添加剤の組み合わせが存在していて、一体ぜんたいどれを選べばいいのでしょうか?
そこで今回は、まずはメーカーやブランドの良し悪しではなく、エンジンオイルの【粘度】に焦点を当てて、基本的な知識と選び方を3つのステップでご紹介します。
この記事を読めば、きっとあなたも愛車にぴったりのエンジンオイル粘度が見えてくるはずです。
1.愛車の新車充填時のエンジンオイル粘度を確認する
さて、まずは新車充填時にどんな粘度のエンジンオイルが入っていたのかを確認しましょう。各自動車メーカーはエンジンの設計や精密さ、パワー等を考慮した上で、エンジンオイルの粘度を決定しています。まずはここが基本の粘度になります。
これは自動車の取扱説明書やインターネットで検索することで確認できます。
さて、エンジンオイルの粘度は『5W-30』のように表記されています。これをSAE規格粘度と言います。
SAE規格はアメリカのSAE INTERNATIONALという団体が定める規格であり、自動車用エンジンオイルの規格粘度としては、広く世界中で使われています。
まずは簡単に、SAE規格粘度の見方を説明します。『5W-30』の表記内のWは『Winter Grade』のWであり、低温冷間時(エンジンスタート時)の粘度数値を、ここでは『5』で示しています。この数値が低い方が始動性はよくなります(柔らかいオイル)。
『5W-30』
次の数値の『30』は、エンジンが温まった状態のエンジンオイル粘度を示しており、ここでも数値が高い方が粘度の高い粘り気のあるオイル、低い方が粘度の低いサラサラとしたオイルとなります。
つまり、この2つの数値の組み合わせで、エンジンオイルの基本的な粘度(硬さ)がイメージできるようになっているのです。そしてズバリ、小さい数値の組み合わせのオイルは、柔らかい特性を持ち、始動性や省燃費に貢献してくれます。
逆に、大きな数値の組み合わせは、硬いオイルということになります。硬いオイルは熱容量の大きな大排気量エンジンやターボチャージャー付きの高性能エンジン、レースやサーキットに使われてきました。(最近ではエンジンの進化に伴い、低粘度エンジンオイルもレース等に使用されるようになって来ました。)
ちなみに、『5W-30』のように、エンジンが冷えている時と温まっている時の2つの粘度が表記されているエンジンオイルを「マルチグレードオイル」と呼びます。逆に「30」などのように数値がひとつしかないエンジンオイルは「シングルグレードオイル」と呼びます。現在はオイルの研究が進み、より高性能なマルチグレードオイルが一般的となり、シングルグレードオイルは過去のものとなりつつあります。
少し横道にそれてしまいましたが、まとめますと、まずは取扱説明書でメーカー指定のエンジンオイル粘度を確認することが第1歩になります。
2.愛車の年式や走行距離を考えてみる
次に考えるのが愛車の現在の状態です。新車充填時のエンジンオイル粘度が『5W-30』であっても、10年10万Km程度を走行していると、エンジン内部のクリアランス(可動部分の隙間の大きさ)が金属摩耗によって大きくなっている場合があります。そのため、エンジンオイルの5大役割のひとつに燃焼室の気密保持がありますが、クリアランスが拡大したエンジンに対して、新車時のエンジンオイルでは粘度不足になり大切な気密保持性能が低下している場合が考えられます。
そういった場合は、エンジンオイルの粘度をひとつ上げる(硬くする)ことで、燃焼室の気密保持性能を確保でき、エンジンパワーのロスを防ぎ、愛車がまた元気に走れるようになります。
高温側のSAE粘度をひとつ(数字で10)上げた例
5W-30 → 5W-40
逆に、新車充填時のエンジンオイル粘度を、より低い(やわらかい)方へ変更することは推奨できません。先程とは逆の現象として、燃焼室内の気密保持性能の低下、エンジンオイルが燃焼室内に入り燃える(オイル上がり/オイル下がり現象 → 白煙が出ます)こともあり、エンジンパワーの低下、燃費の悪化、燃焼室内にスラッジ(汚れの堆積物)の発生などの悪影響が考えられるからです。
まとめますと、ここでは走行距離が既に5~8万Km以上の場合は、粘度を少し上げることを検討してみてください(車両の状態やオイル交換歴によっても変わります)。
3.愛車の乗り方、使い方を考えてみる
最後に考えなければならないのは、やはり自分のドライビングスタイル、クルマの使用方法です。
同じ年式の同じ車種でも乗り方や使い方は、千差万別ですね。1日の最初のエンジン始動でアイドリングをしっかり行う方、アイドリングなしで早朝の通勤で5Kmくらい乗る方、毎日高速道路で100Kmの連続走行をする方もいらっしゃいます。信号待ちからのスタートで5000回転まで引っ張る方もいるかも知れません。
つまり、アイドリングをしない方は、始動性が高い「0W-」や「5W-」の粘度選択になりますし、しっかりアイドリングを行える方は、「10W-」や「15W-」の選択でも問題ありません。
また、燃費を重視した街乗りであるならば、高温側の粘度を「-20」や「-30」にするのがお勧めです。軟らかいオイルはオイル自体の粘性による抵抗も少なく、エンジンパワーのロスが少ないからです。一方で、スポーツ走行、サーキット走行の方は、燃費よりもエンジンの油膜保護性能や冷却性能、密封性能を優先させて「10W-40」や「10W-60」のような硬いオイルがお勧めになります。スポーツ走行、サーキット走行を行う車両は、チューニングによって馬力アップやトルクアップしている場合も多く、エンジンオイルの粘度による抵抗の影響を受けにくいと言えます。
要するにここでは、自分がどういった運転をしているか(したいのか)を客観的に考えて見ることが大切になります。
【まとめ】
-エンジンオイル粘度の正しい選び方-
1.取扱説明書でメーカー指定の粘度を確認する
2.愛車の年式や走行距離を確認する
3.自分自身のクルマの使い方を確認する
価格と性能のバランスを考えて、自分にピッタリなエンジンオイルを選びましょう!