私たち「高千穂ムラたび」のビジネスの核となっているのは、地域資源を活用して新たな価値を生み出すことです。とは言っても、実は元々はどこにでもある田舎の一つに過ぎません。特別なものがあるとすれば、昔から地元で有名だった「秋元神社の湧き水」ぐらいです。そこで私たちは、この湧き水と、湧き水で育てた棚田米を使って、地域ならではの新しい商品を生み出そうと考えました。
そんな中でまず目をつけたのが、高千穂町の伝統文化である「神楽(かぐら)」。実はこの神楽、無形文化財にも指定されているほど大切にされている文化で、その中には神様が「どぶろく」というお酒を造る舞もあります。このどぶろくにインスパイアされて、最初の商品として「どぶろく」を作ることを決めたんです。
よそから見れば「何もない田舎」と思われがちな場所ですが、実際に足を踏み入れてみると、地域ごとに違う魅力や価値が見えてくるものです。実は私自身も高千穂の出身ではないので、外からの視点で地元の魅力を発見できたのかもしれません。
そして、どぶろくを商品にすることをフックにして、皆さんに秋元集落に来ていただき、そこでどぶろくが生まれた背景や、神楽の歴史を紹介しながら、高千穂をたっぷり楽しんでもらいたいという体験を思い描いていました。訪れる方々には、地域の特産品を味わってもらいながら、高千穂の歴史や文化をもっと身近に感じていただけたらと思ったのです。
でも、現実はそう甘くありませんでした……。
つづく。