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素材にほれぼれ、手触りにうっとり 木のハンコたち(その1)

公開日:2024/08/27 更新日:2024/10/02
サラリと優しく温かみを感じるような手触りと、見た目の美しさを兼ね備えた木のハンコたち。 ハンコといえば象牙や黒水牛などの動物系印材が有名ですし、昨今ではプラスチックやチタンなどの金属、パワーストーン系の石のハンコもありますが、実は、全体のシェアでは木のハンコの占める割合はかなりなものです。 木のハンコには、素材そのままの木目を活かした仕上がりになっているものや、天然色素で染色したカラフルなものもあります。 中には天然記念物を素材にしたハンコも! そして木のハンコは、端材や合板を利用する等、サステナブルな製品でもあるんです。 知っているようで意外と知らない、木のハンコをご紹介します。
■屋久杉(やくすぎ)印鑑
天然記念物!際立つ個性のスター
屋久杉(やくすぎ)印鑑
屋久杉は、1993年12月に日本で初めて世界自然遺産に登録された、屋久島の原生杉です。 屋久島には三代杉(樹齢約500年)、仁王杉(樹齢不明)、大王杉(樹齢約3,000年)、夫婦杉(樹齢約2,000年(夫)、約1,500年(婦))等の巨木がありますが、中でも有名なのが幹回り16.4mで、日本で最も太い杉と呼ばれる「縄文杉」(樹齢約2,150年から7,200年・諸説あり)です。 屋久杉の伐採利用は1560年頃(桶狭間の戦があった年)が最も古い記録として残っており、そこから明治時代の地租改正で屋久島の90%以上が国有地化されるまで船材・建材として行われていました。 やがて、1970年ごろから自然保護運動の一つとして屋久杉の保護運動が始まり、1993年12月に屋久島が世界遺産認定されてからは伐採に制限が設けられました。 2001年には保護区以外の伐採可能な立ち木も切り尽されて伐採が終了、そこからは過去の切り株や台風による倒木・土埋木のみが年に数回本土に運び出され、入札権を持っている業者のみが購入を許可されていましたが、2019年に土埋木の搬出も禁止され、同年3月の競りを最後として取引されていません。 現在は現存在庫のみが取引されており、屋久杉の木材は大変貴重なものとなりました。 屋久杉は栄養の少ない花崗岩の高地に自生しており、成長が遅いため木目がとても細かく詰まっています。 また、屋久島は降雨が多く湿度が高い地域のため、屋久杉には抗菌作用のある樹脂分(ヤニ)が多く、腐りにくいという特徴があります。 このため、一般的な杉の樹齢は長くても500年程度ですが、屋久杉は桁外れに長い樹齢を誇っています。 抗菌作用があり腐りにくいという特性から、家具材のほか、船材や屋根材として利用されてきました。 その際に発生する端材に特殊加工を施し、印鑑に適した素材に仕上げております。 先にも書いた通り、屋久杉は樹齢1,000年以上を経た自生杉のみ称することが出来ます。 印鑑には数々の材料がありますが、千年以上の時を経た印鑑は「屋久杉」のみとなります。 人を寄せ付けない神秘的な大原生林に幾重にも年輪を刻み、力強く生きてきた屋久杉は、壮大な生命のロマンを秘め、原始の荘厳さそのものです。 今はもう新規伐採は行われておりませんので、在庫限りの販売となります。
■白檀(びゃくだん)印鑑
仄かに香る白の貴婦人
白檀(びゃくだん)印鑑
扇子や仏具には良く使われますが、印鑑としてはちょっと珍しい印材です。 白檀の英名はサンダルウッドです。お香では英名の方がお馴染みですね。 原産地はインドで、サンスクリットでは「チャンダナ」と呼ばれ、仏典にも登場します。 英名のサンダルウッド(sandalwood)は「サンダルを作るための木」ではなく、サンスクリットのチャンダナ(candana)が元になっています。 白檀と言えば、とにかくお香が有名です。 アジア系雑貨店などでインド産の線香やコーン型のお香を見かけますし、このようなお店には独特の香りが漂っている事が多いと思います。この香りの一因が白檀です。 身近なところでは扇子が有名で、高級な扇子には骨の部分に白檀が使われています。扇げばふわりと香るので、暑い夏に一服の涼をもたらしてくれます。 白檀はお香のように熱を加えなくても芳香を放つのが特徴で、この白檀印鑑も、新品の状態ですと仄かにさわやかな甘い香りがします。 香りの正体はサンタロールという成分で、インドの伝統的医学アーユルヴェーダでは、心身全体を冷まして鎮める作用があるとされています。 印鑑を手にしたからと言って、このような効能の恩恵にあずかれるとはもちろん言えませんが、それだけ古来から親しまれてきた香木である事の証拠です。 見た目はまさに天然木といった風情で、木目の走り方にも個体差が強く現れます。同じものは2つとありません。 木材印鑑特有のサラリとした手触りに加え、特有の爽やかな香りがするので、手にした時の喜びもひとしおです。 中国には『栴檀(せんだん)は双葉より芳し』という諺があります。 ここで言う栴檀(せんだん)とは白檀の事で、白檀は発芽した頃から香気を放つ事から『大成する人は幼少のときから優れている』という例えとされています。 白檀の印鑑がいつ頃から作られたのかは分かっていないのですが、この例えにあやかって、お子様に白檀で印鑑を作るようになったという話もあるそうです。 白檀は生態的にとても稀有な植物で、イチョウのように雌雄異株(オスの木、メスの木がある)で、生長に伴い周りの木に寄生する特性がある半寄生植物であるため、栽培がとても困難で年々入手が難しくなっています。 近年ではインド政府によって伐採制限・輸出規制が掛けられており、このため大変高価な素材となっています。
■紫檀(したん)印鑑
美しさと堅牢性を兼ねた優等生
■紫檀(したん)印鑑
黒檀・鉄刀木と共に唐木三大銘木に数えられる貴重で珍重される優れた印材です。 紫檀の英名はローズウッドとなります。こちらの呼び名の方がメジャーかもしれません。 紫檀は硬くて非常に重く、脂(ヤニ)を多く含んでいるので耐虫害性や耐候性があり腐敗せず長持ちします。 古くから日本や中国では仏具や経机に、ヨーロッパでは高級家具や楽器に用いられてきました。 用途は非常に広く、このほかにも箸・楽器・ビリヤードのキュー・チェスの駒・工芸品などに用いられています。 代表的なものがクラリネットやオーボエの本体、マリンバなどの打楽器やギターの指板です。 数十年から数百年を経て、現代でもアンティークとして残存しているものが多い事実からして、耐久性に優れた証拠ではないでしょうか。 原木は赤褐色~濃茶色をしており、芯が濃赤褐色で、外に向かうにつれ淡黄白色になります。 印材には目が詰まった、濃赤褐色の芯材を使います。 光の反射具合で紫色に見えるのが紫檀の由来となっています。 木材印鑑に共通した特徴が、サラリとして温かみがある触感と、奥ゆかしい艶やかさです。 黒檀や紫檀のような染色しない天然素材では、顕著に特長が現れてきます。 お値段以上の高級感から、手にしたときにきっと満足出来る逸品であると自信を以てお勧めします。
■黒檀(こくたん)印鑑
ミステリアスな優等生
■黒檀(こくたん)印鑑
黒檀は繊維の密度が高く、堅牢で見た目が美しい事から最高級クラスのピアノの黒鍵や高級家具、床材などに使われています。 木製印材の中でも抜群のサラリとした手触りに加え、指紋が目立ちにくいところも好印象。 その美しい見た目とは裏腹に、とてもオトクなお値段で満足度はピカイチだと思います! 木材には『三大唐木(唐木三大銘木)』と呼ばれる素材があります。 黒檀(こくたん)・紫檀(したん)・鉄刀木(たがやさん)がそれにあたります。 鉄刀木って面白い読み方ですよね。でも、ちゃんと「たがやさん」で「鉄刀木」と変換するんですよ。お試しください。 余談はさておき、三大唐木のざっくりとした共通点は、成長が遅くて木目が緻密なこと、油脂分が多く堅くて重いこと、ダークな色合いと美しい独特の模様があることなどが挙げられます。 繊維が緻密で適度な堅さがあるのが印材の条件ですので、黒檀は本当に印鑑にマッチした素材なんです。 さて、紫檀と鉄刀木はマメ科の植物で単一科目なのですが、黒檀は実は一括りに出来ません。 基本的に黒檀はカキノキ科カキノキ属の広葉樹なのですが、「黒檀」と呼ばれる木には他にもマメ科類「アフリカンブラックウッド」が入ってきます。 ややこしいですね。 さらにややこしい事に、「黒柿(くろがき)」と呼ばれる素材は黒檀と同様にダークな色合いを持ち、文字通りカキノキ科の植物なのですが、黒檀としては扱われません。 それというのも黒柿(くろがき)という素材は「柿の木を切ってみたら黒かったので、黒柿」と、いう感じの素材なんです。 しかもこの黒柿は日本在来種で、黒檀の殆どはインドや東南アジア、中国産のものです。 天然素材としては珍しい黒い木だから珍重されるのですが、カキノキ科などの科目分類がされるようになったのは近代のお話で、それまでは厳密な区別などありません。 ただ、国産在来種の黒柿は特別なもので、海を渡ってきた黒檀とは別物とされているのです。 かなり端折った説明で諸説あるお話ですが、それにしてもややこしいですね。 色々な話がありますが、当店の印鑑に使われているのは縞黒檀という種で、特徴は三大唐木と一緒。印鑑には最適です。 ちなみに私も数十年『黒檀印鑑』を愛用しています。そういう意味でとにかく、当店イチオシです。
いかがでしたでしょうか? 今回は、ちょっとした謂れや癖のある木のハンコを紹介してみました。 この他にもまだまだ木のハンコはあるのですが、とても長くなってしまいますので、回を改めてご紹介します。お楽しみに。 ---------------------------------- ライター:e-はんこ 昭和初期創業のハンコ屋店長。印章文化という良く分からない文化にゆる~く挑んでます。
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