西陣織で最も歴史がある綴機(つづればた)で織る綴織は、職人の手足で織機を操作して糸を1本1本織り込むため、ジャガード織機で織る綴織と比べて、とてもとても織る時間がかかかります。
とてもとても織る時間はかかりますが、ひとつひとつに個性がある、シルクの重みを感じる絹織物を織ることができます。綴織特有の爪掻き文様を織ることができるのも私たちの綴織です。
貴織は、この伝統技法にこだわり、上質なシルク糸をつかい、手間と時間をかけたものづくりをしています。
私たちが織る国産の綴織(つづれおり)は生産数が少なく希少で、店頭にならぶことはほとんどありません。実際にみたりさわったりできる機会も少ないため、綴織の特徴を簡単ですがまとめました。
ノコギリ刃のようにギザギザに刻んだ爪先で、文様となる糸を1本1本掻きよせて文様を織り描く技法を「爪掻き(つめかき)」と呼びます。
その技法は 「日に寸、五日に寸、十日に寸」 と伝えられるほどの時間と高度な技術が必要であり、複雑な文様になると1日にわずか1cmしか 織り進めないものもあります。そのため極めて生産数も少なく希少価値の高い織物となっています。
文様は計算された型紙や図案があるのではなく、まるで白いキャンパスに絵を描くように、下絵とよばれる図案に代わる絵をみながら、絵具の色を混ぜ合わせるように多彩な糸をよりあわせて新たな色を創り出す、線を描く濃淡を表すように、ハツリやボカシという爪掻きの技を駆使して文様は織り描かれていきます。
たとえ同じ下絵を用いたとしても 厳密には同じ文様が織り描かれることはありません。ひとつひとつに個性があり世界にひとつだけの作品として生まれます。それを創り出すのは高度な技術もさることながら、色を形を創造する豊かな感性がなければ成し得ないことです。それが日本美術織物の最高峰といわれる所以でもあります。
ハツリ目は文様の部分と部分の間にできるスキ間で、文様となる糸を必要な部分に必要なだけ、爪で1本1本織り込みます。このとき生まれるのが爪掻き特有の「ハツリ目(ハツリ孔)」です。
このように必要な部分に必要なだけ織るため、ジャガード織機の綴織のように織巾全体(左右)にヨコ糸が通らず、表も裏も同じ文様が表れます。
「杼(ひ)」の中にあるのは絹糸(ヨコ糸)を巻いた「管(くだ)」。
足下にある「踏木(ふみぎ)」を踏むことで、踏木につながれた「綜絖(そうこう)」が上下に動き、連動したタテ糸が開口します。 その間に「杼」を通すことでヨコ糸が通ります。
「杼(ひ)」に糸を巻いた「管(くだ)」を取り付けて、ヨコ糸を織り込んでいきます。 色を使うときは色の数だけ「杼」を用います。 私たちたちの綴織の「杼」は人の手が扱いやすい大きさ、手のひらサイズの小さなものです。
ゆえに糸を巻く「管」も小さいため巻かれる糸も少なく、およそ数センチ分ほど織る糸の長さしか巻けません。「管」に巻いた糸がなくなると次の「管」に取り替え織り進みます。 そのときに糸のつなぎ目ができます。
伝統的工芸品産業の振興に関する法律により指定されている西陣織は12種類あり、それぞれ工程や技法は異なり、1.綴 2.経錦 3.緯錦 4.緞子 5.朱珍 6.紹巴 7.風通 8.綟り織 9.本しぼ織 10.ビロード 11.絣織 12.紬 の12種類に分類されます。西陣爪掻本綴織は西陣織のひとつ「綴」に分類され、西陣織工業組合の登録商標です。