チロシン(Tyrosine)は、体内で合成される「非必須アミノ酸」のひとつです。フェニルアラニンというアミノ酸から生成されるチロシンは、タンパク質の構成要素であり、身体のさまざまな機能に関わる成分の一つとして知られています。
その名は「チーズ(tyros)」に由来し、実際に乳製品や大豆製品などに含まれていることが多く、日常の食事から自然に摂取されている成分です。
チロシンは、健康食品やサプリメントの成分としても活用されており、主に以下のような分野で使用されています。
・集中サポート系サプリメント
・アクティブな生活を意識したフォーミュラ
・美容・エイジングケアを意識したサプリメント(白髪ケアなど)
近年では、加齢に伴う外見の変化やパフォーマンス低下への対策として、チロシンを含む製品のニーズが拡大しています。
「仕事や育児で集中力が続かない」「白髪が増えてきた気がする」「若々しく見られたい」──。こうした声が増える中、体の内側からのアプローチとしてチロシンが注目されています。
とくに、神経伝達物質や色素(メラニン)の合成に関わる可能性が示唆されており、メンタルと美容の両面から「体感」に関心が集まっている成分です。
直接的な効果をうたうことはできませんが、以下のような分野での「可能性」が研究・報告されています。
1. 集中力・認知パフォーマンスの維持
特定の環境下(寒冷、睡眠不足、ストレス負荷)において、パフォーマンスの低下を緩和する可能性が報告されています。
2. 気分のバランスサポート
ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の材料として知られており、心のバランスを保ちたい人々の間でも注目されています。
3. 白髪ケアに対する期待
後述の通り、チロシンはメラニン合成に関与する酵素「チロシナーゼ」との関連が示唆されており、白髪対策サプリやヘアケア製品での活用例も増えています。
⚫︎チロシンの研究情報
以下のような研究が、チロシンの注目度を後押ししています。
睡眠不足下での認知パフォーマンス維持(Neri et al., 1995)
寒冷環境下での作業能力維持(Shurtleff et al., 1994)
メラニン生成とチロシン・チロシナーゼの関係性(Solano, 2014)
なお、これらは限定された条件下での研究であり、万人への効果を示すものではありません。
白髪は加齢やストレス、栄養バランスなど複合的な要因によって発生するとされています。髪の毛に色をつけているのは「メラニン色素」であり、このメラニンの合成に関与するのがチロシンとチロシナーゼという酵素です。
● メラニン生成の流れ(簡略版)
チロシン →(チロシナーゼの作用)→ ドーパ → メラニン
メラニンが毛髪に取り込まれることで、髪に色がつく
この過程において、チロシンはメラニンの「もと」となる重要なアミノ酸であるため、白髪ケアや髪の健康維持を目指す人々からの関心が高まっています。
もちろん、白髪のすべてがチロシン不足によるわけではなく、遺伝やホルモンなどさまざまな要素が関わっている点には注意が必要です。
● 多く含まれる食品例
鶏肉、牛肉、豚肉などの動物性たんぱく質
チーズ、ヨーグルトなどの乳製品
納豆、豆腐、味噌などの大豆製品
卵、魚、ナッツ類(アーモンド・ピーナッツ)
一般的な食生活でもチロシンは自然に摂取されていますが、「効率よく補給したい」「食事が不規則」といった場合には、サプリメントでの補完も選択肢の一つです。
ビオチンは、体内の代謝をサポートする重要なビタミンであり、美容・健康維持の観点からも注目される成分です。特に、加齢や食生活の変化によって「痩せづらくなった」「肌や髪の調子が気になる」と感じる方にとって、見直しておきたい栄養素のひとつです。
食事からの摂取が難しいと感じる場合には、サプリメントなどで補う方法もありますが、過剰摂取には注意しつつ、あくまで食生活の一部として取り入れることが大切です。
チロシンは“内側からのセルフケア”を支える注目アミノ酸
チロシンは、日々の食事からも摂れる身近なアミノ酸でありながら、集中力サポートや白髪ケアを含む美容分野まで幅広く期待されている成分です。特に、現代人が抱えるストレスやエイジングの悩みに対して「内側からアプローチしたい」というニーズが高まる中、チロシンはサプリメント市場でも存在感を増しています。
メラニンの生成や神経伝達物質の材料といった側面からも注目されており、食品やサプリでの適切な補給が検討されています。
ただし、チロシンは医薬品ではなく、「体調や目的に合わせて摂り入れるべき栄養成分」のひとつ。
1日の摂取目安や体質への合う・合わないを意識しながら、継続的なセルフケアの選択肢として、ぜひチロシンを上手に活用してみてはいかがでしょうか。
Deijen, J. B., et al. (1999). "Tyrosine improves cognitive performance and reduces blood pressure in cadets after one week of a combat training course." Brain Research Bulletin.
Neri, D. F., et al. (1995). "The effects of tyrosine on cognitive performance during extended wakefulness." Aviation, Space, and Environmental Medicine.
Solano, F. (2014). "Melanin and melanin-related polymers as materials with biomedical and biotechnological applications—Cuttlefish ink and mussel foot proteins as inspired biomolecules." International Journal of Molecular Sciences.
Fernstrom, J. D. (2000). "Can nutrient supplements modify brain function?" The American Journal of Clinical Nutrition.
食品成分表2020年版(八訂)
本記事の内容は執筆時点で公表されている研究や文献に基づきまとめた情報です。最新の知見や個々の健康状態に応じたアドバイスは、医師や栄養士などの専門家にご相談ください。あくまでも一般的な参考情報としてお役立ていただければ幸いです。