バイクでオフロードを走っていると言えば、「土の上を走るやつだよね?」とよく訊き返されます。確かにそうなのですが、単にオフロードと言っても、その中でさらに細かくジャンルが分かれていますので、今回はそれぞれの特徴をご紹介していきます!
まずは車両の違いについてです。オンロードバイクもオフロードバイクも基本的な構造は同じです。エンジンがあって、フレームがあって、それを支えるサスペンションがあって、という部分ですね。ただその一つ一つが、舗装されていない土や砂、小石が浮いている路面でも走行出来るような仕様になっています。オフロードバイクにはおおまかに以下のような特徴があります。
【軽量である】
中にはアドベンチャーモデルのように200kg近くの巨体もありますが、基本的には市販車でも150kg前後と、軽量な車体です。単気筒というエンジン形式を採用していることもありますが、滑りやすい路面では軽い車体の方が、単純に乗りやすいです。
【車高(シート高)が高い】
車高が低いとフレームやエンジンの底を擦ってしまうことより、全体的に車高が高く設定されています。また後述するサスペンションのストローク量(伸び縮みする量)が多いことより、サスペンションの全長が長くなった結果、車高(シート高)も高くなる傾向があります。
【サスペンションがよく動く】
凹凸のある路面を走行するため、サスペンションがしなやかによく動く仕様である必要があります。またオフロード走行ではジャンプするシーンもあることより、着地したときにサスペンションが縮みすぎない(フルボトムしない)ように、ストローク長(サスペンションが伸び縮みする長さ)を多めにとる必要があります。
【アップ(バー)ハンドルである】
操作のしやすさと路面に対しての重量の掛け方より、アップハンドル(バーハンドル)を採用しています。またオフロードバイクは立って乗る(スタンディング)ことが多いため、アップハンドルが採用されています。
【転んでもバイクが壊れにくい】
練習に転倒は付き物ですが、その度に外装やタンクに入る傷を見て、溜息を付くのは誰しも嫌なもの。特にサーキットなど高い速度域で転倒すると、ダメージも大きくなりがちです。
【丁寧な操作が身に付きやすい】
アスファルトと雪の上を歩くシーンを想像してみてください。雪の上の方が、一歩一歩慎重に歩くと思います。もっと細かく言えば、歩く際の「踏み出し」と前に進む際の「着き足」の動作に気を遣うと思います。バイクに例えると、「踏み出し」→アクセル、「着き足」ブレーキのような状態でしょうか。路面が滑りやすいからこそ、オフロードを走行することで、自然と丁寧な操作が身に付きます。
【冬でも練習出来る】
オンロードの場合、タイヤの温度が少なからず気にかかるところです。いわゆる「タイヤを温める」というやつです。タイヤが温まりづらい冬の場合、走行を重ねるごとに、逆にタイヤが冷えてしまい転倒するケースも少なくありません。オフロードの場合、(厳密には走行すれば内圧は上がりますが)タイヤの温まりを気にせず走行出来るため、冬場でも安心して練習が出来ます。
色々とおすすめ理由を書きましたが、一番の理由は何よりも「楽しい」ことです。大人になってから泥んこになることもあまりないですし、「バイクを自分で操る感覚」が低いスピードでも味わえるのが、オフロードバイクで練習する良いところかな、と思います。
次にオフロードのジャンルについて簡単にご説明します。単に「オフロード」と言っても実は内容が結構異なっており、それぞれ専用のバイクがあるほどです。大きく分けて4つのジャンルがあります。
・ダートトラック(フラットトラック)
・モトクロス
・トライアル
・エンデューロ
ダートトラック(フラットトラックとも呼ばれる)は、オーバル(楕円形)または校庭のような、平坦なダート(フラットダート)で行われるジャンルです。土や砂利の浮いた平らな路面を走行するため、タイヤが滑りやすく、スライドコントロールが身に付きます。ジャンプや轍がないことより、オンロードバイクしか経験がなくとも比較的馴染みやすいため、一番オフロードビギナーにもおすすめしやすいです。ただ、特にオーバルコースは、日本国内でも限られた場所にしかないので、まずは近場にコースがあるか確認する必要があります。
モトクロスは、人工的に整地した起伏の激しいコースを走るジャンルです。スピードやコーナリングだけでなく、ジャンプなどの技術が求められるダイナミックなスポーツとして知られています。
コースの特徴としては、ジャンプ台やタイトコーナー、ウォッシュボードと呼ばれる、連続した凹凸のセクションなどが有名です。コースの長さは、通常1周が1.5〜3km程度です。アメリカのスーパークロスが有名ですが、野球場などの室内で開催したりすることもあります。とにかく運動量が多いので、バイクのバランスをとりつつ体力を向上させるのにも最適です。全国各地に大小様々なコースがあるので、お住まいの場所に限定されずに、実は楽しむことが出来るジャンルです。
トライアルは、ほかのジャンルとは異なりスピードを競うのではなく、障害物を乗り越える技術とバランス感覚を重視するジャンルです。具体的には岩場や丸太、急斜面などの障害物が配置された「セクション」と呼ばれる区間を、なるべく足をつかずにクリアすることを目指す内容です。障害物などを設置した専用のコースもありますが、山や河川敷などの傾斜のある場所でも出来るため、比較的場所を選ばずに練習することが出来ます。トライアルバイクと言えば、シートが無い独特な形状をしており、この専用車両がないとトライアルは出来ないと思いがちですが、特に最初の頃はセローなどの市販車でも十分トライアルの雰囲気を楽しめます。白バイ隊員も市販車でトレーニングをしているほどです。スピードは出ないかわりにバイクの上で終始人間がバランスを取り続けなければいけないので、体力と集中力を養えます。比較的年齢が高くても楽しめる内容のため、年配の方も多くいらっしゃいます。
そして最後に今一番人気のオフロードジャンルであるエンデューロです。エンデューロはモトクロスと似ていますが、より長距離かつ過酷な自然環境を走破することに重点を置いたジャンルです。耐久性(Endurance)が名前の由来であるとおり、ライダーとマシンの限界が試されます。パリダカなどもこのジャンルの属しています。走行する環境も、土、砂、泥、森、ガレ場(岩場)、浅い川など、整備されたコースとは異なっています。とくに最近は「ゲロアタック」と呼ばれる、とにかく一周走破出来ればいいような、過酷な内容が人気です。モトクロスの技術+トライアルのバランス感覚、長時間走りきる体力など、複合的な要素が求められる内容で、さながらバイクのマラソン大会のようでもあります。
ここまでを読んでいただいて、オフロードバイクで練習してみたい!と思った方へおすすめな車両を2台ご紹介します。
【HONDA CRF125F】と【YAMAHA TT-R125】
どちらも4ストローク125㏄のファンバイクと呼ばれるカテゴリーです。車体も小さく軽量で、かつパワーもそれほどなく、穏やかな特性のため、非常に扱いやすいです。ただそれが、不慣れでかつちょっとした操作でバランスを崩しやすいオフロード走行では、強みになります。これまでにご紹介したダートラ・モトクロス・トライル・エンデューロ、どの競技でも遊べますし、ある程度上達してきても、様々な使い道があるので、所有していても損はしません。さらにはリセールバリューが高めというもの〇です!
デメリットがあるとすれば、ナンバー取得が難しいため、バイクを運ぶトランポと、置き場の確保が必要なことです。
ここまでオフロード各ジャンルをご説明してきました。オンロードとオフロード、バイクにも2つの世界がせっかくあるので、どちらも楽しんでいただけたらと思います。最初からバイクを購入するのは、色々と難易度も高いので、まずはレンタルで始めることをおすすめします。埼玉県川越市にあるオフロードヴィレッジでは、「モトクロスごっこ」というマシンから装備までフルレンタル出来るスクールを頻繁に開催しています。大阪にある「ライダーパーク生駒」でも車両や装備がレンタル出来、定期的にスクールを開催しています。是非お気軽に参加してみてください!