ゼロポジションという水着をご存知でしょうか。
最初の頃は、初心者スイマーなどへの指導として人気に火が付きましたが、近年では本格的な競泳選手が水泳の練習に取り入れて結果を残し始めている事から競泳選手の間でも新たに浸透をし始めています。
このゼロポジション水着(通称ゼロポジ)の人気と使い方を探ってみます。
この水着を開発したのはウェットスーツの素材メーカーとして有名な山本化学工業です。
競泳の世界でも有名で、2007年頃にレーザー・レーサーが登場し世界の話題を席巻と独占したのに対して、それに勝ちうる結果を出せる対抗馬として話題になったのがこの山本化学工業のバイオラバー(当時はたこやきラバーとも言われていました)素材でした。
その名の通りラバー(ゴム)素材で、表面に非常に小さなくぼみがあり、それによって水流を起こし、前に進みやすくるといった機能だったと記憶しています。
その小さなくぼみがタコ焼き機に似ている事や、この会社が大阪にある事などから、たこやきラバーと世間を騒がせました。
当時のレーザー・レーサーは記録を追求するために生地の伸縮性が少なく身体を締め付ける事から、着用が非常に大変でした。複数人係でようやく着用できるというレベルだったといいます。
それに対して、バイオラバーはゴム素材の特徴を活かして高い伸縮しながらもしっかりと身体をホールドし、その上、それを着用すると下半身を水面へと浮かす(持ち上げてくれる)機能もありました。
これらの機能はトップ選手の間で話題となり、高速水着の市場で当時独占状態だったレーザーレーサーの本命対抗となったのです。
2009年前後にルールが改定される前までに競泳の世界で記録的な数字を残したのは、レーザーレーサーか、ラバー素材を使ったもののどちらかでした。
それを元に、この山本化学工業が作ったのが、このゼロポジションという水着です。
最近(2020年頃)の競泳水着(高速水着・レーシング水着)開発のコンセプトとして各社共通で重要視されているのが、下記の3点だと感じます。
浮き感(主に体幹の保持)
体積やブレを抑える為に強めの着圧だが、動きやすい
キックの打ちやすいサポート(特に後ろ方向)
今回のゼロポジションで重視するのは1番上の浮き感という所が大事になります。
感覚ではなく、実際に足が沈まないように作られた水着です。
本番で着用するわけではありませんので、本番で浮き感を身につけさせるという事です。
一流選手であれば水面に対して水平な(ゼロポジションの)状態が維持できますが、水泳に慣れていない人は足だけが沈みます。
その一流選手と水泳初心者の違い(原因)となる、水平状態を維持するために必要なのが浮心重心間距離の概念です。
浮く上で大事になるのは「浮心」と「重心」の2つ点と、このゼロポジの提唱の中でいわれています。
では、浮心と重心の違いとは何か
浮心…浮力が作用する点(おへそあたり)
重心…重力が作用する点(おへその下あたり)
一流選手は重心と浮心の位置が近いのに対して、水泳初心者はその距離が遠く、そのため足だけが沈んでいくのです。
つまり身体を水面に対して水平に保ち続けるめには、浮心と重心の距離を少しずつでも練習で縮めていく事が大事です。
その体の2つの点を意識させるトレーニングをするのがこの水着を競泳の練習で使う主な目的です。
練習において大事な事は、上記のようにゼロポジション状態を自分の体感として身に着け、レース本番でその状態を維持することにあります。
水平状態と、そうでない状態を繰り返し身体に覚えさせていくのですが、そこで必要になるのが、着用状態と未着用状態を繰り返す事です。
・ゼロポジ着用時
身体がフラットになる感覚を身体に覚えさせる。
フラット時(高速で泳いでいる)時の感覚を、ゆっくりとした練習でも得られる為、その環境で手や足の動きを研究する。
・ゼロポジ未着用時
ゼロポジ着用時の感覚をイメージした練習して、身体の意識の違いを修正することで浮心重力間距離を縮めていく。
上記の「着用」と「未着用」をそれぞれ意識しながら繰り返すことで、少しずつ感覚を身に着けていきます。
基本的に全て同じ素材ですが、厚みの違いによって浮きやすさは大き※基本はラバー素材ですが、プロフェッショナルは裏面、マスターズは表面にジャージ素材を貼り付けてあります。ジャージ素材を使っているのは、ラバー水着の割れを防ぐためという目的があるそうです。
必ずしも浮力が高いものが良いかというとそうではなく、自分の泳ぎのレベルに合ったものをみつけるのが何よりも大事です。
また同じ1mmでもマスターズとプロフェッショナルは大きく違いま浮くのもマスターズに比べても少ない為、強化選手レベル以上をオススメします。
最初は厚みのあるモノから始めて徐々にステップアップしていくのも楽しいかもしれませんね。
ちなみにプロフェッショナルのデザイン(色)ありは塗料の関係でラバーのみとは表面感が違って見えます。
ゼロポジは、男女ともに水着の上から着用するのが通常ですが、水着の厚みはそこまでありませんので、基本的にご自身の体格を採寸してサイズ表を参考にして頂くのをオススメしております。
繰り返しになりますが、マスターズ1mmとプロフェッショナルの1mmは同じように見えますが、プロフェッショナルの方がサイズをタイトに絞っている為、慣れていないと着用が大変かもしれません。
女性に関しては、男性とはお腹の履く位置(高さ)が違うため、プロフェッショナルであればハイウエスト、またはマスターズを選択されるのが良いかもしれません。
ここまで選手向けの情報に特化してご紹介してきましたが、多くの人にとって泳ぎの改善以外でも恩恵が得られるのが、このゼロポジション水着です。
例えば、ウエットスーツ素材だから保温効果が高く、下腹部を温められる為、プールの中でも冷えにくく、運動効率があがりやすい。
また、下半身が浮く事によっていつもよりも進みやすくなるため、長距離が泳ぎ易かったり、速く泳げるようになる点です。
というように、この1,2年で練習にゼロポジを導入して練習するチームが増え、実際に結果を残していると聞きます。
一度ゼロポジションの感覚を身に着けてみてはいかがでしょうか。
ウェットスーツ素材は折れ曲がると跡がつくため、丁寧に発送することが大事です。MIHORO SWIM SHOPでは、下記の通り発送していますので、安心してご注文ください。