冷や汁でつながる物語 ― 「あんた、ちゃんと食べちょっと?」編
公開日:2025/04/18 更新日:2025/04/18「じゃあ、行ってくるね」
玄関先で母と交わしたその一言が、あんなにも重たくなるとは思っていなかった。
結婚して、夫の転勤で宮崎から関東へ。
見知らぬ土地、見知らぬ人、気を遣う毎日。
新しい生活は、期待よりも戸惑いが多くて、気づけば私は「家族のため」にばかり時間を使っていた。
「自分のために食事をつくる」
そんな当たり前だったことが、少しずつできなくなっていった。
ある夏の日、実家から荷物が届いた。
開けると、中には野菜や調味料、そしてラップにくるまれた手作りの「冷や汁の素」。
そして、母の手紙。
「暑いやろ。こっちは冷や汁がうまい季節になったよ。
あんたも、ちゃんと食べなさい。あの味、忘れてないよね?
つくり方、裏に書いちょるから安心して。」
泣くまいと思っていたのに、気づけば手紙はしわくちゃになっていた。
さっそく、母の手紙を読みながら冷や汁をつくってみた。
麦味噌をすって、ごまを加えて、焼いたアジをほぐして。
きゅうりと豆腐を加え、冷たい水でといて、白いごはんにかける。
その一口目で、ぶわっと記憶がよみがえった。
夏休みに汗びっしょりで帰ると、台所でせっせと冷や汁を用意してくれていた母の姿。
「食べたら元気になるよ」と、笑って差し出してくれた母の声。
その味は、母そのものだった。
私は、母の冷や汁で育った。
暑い夏の日、体がだるいとき、心がちょっと疲れたとき、必ずあの一杯があった。
結婚して、家族が変わっても、環境が変わっても、母の冷や汁は、私を“私らしく”戻してくれる。
「大丈夫よ、てげてげでいっちゃが」
そんな母の声が、漂ってくるようで、自然と心がほどけていく。
最近、夫がこう言った。
「この冷や汁、ほんとにうまいなあ。こんなの、こっちじゃ食べたことないよ」
私は嬉しくなって、「母がつくってくれた味なんだよ」と笑った。
いつか、私もこの味を、誰かに渡していけたらいい。
子どもができたら、夏には一緒に冷や汁を食べたい。
そう思った。
母の味を、次の世代へつないでいく――
それは、私にとっての“ふるさととのつながり”なのかもしれない。
私たちミート21の冷や汁は、単なる郷土料理ではありません。
それは、「大切な人を思い出す一杯」。
食べるたびに、ふるさとや家族をそっと思い出す、そんなやさしい味です。
結婚、就職、引っ越し、子育て。
人生の節目にふと恋しくなる“あの味”を、手軽に、でも本格的に。
どこにいても、あの夏の風景と、やさしい母の手がよみがえるように──
ミート21は、そんな一杯をお届けしています。