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割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その1

公開日:2024/10/22 更新日:2024/10/22
■割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その1 本日のお題は「割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金」です。何度か売掛金についてはこのメルマガで書いたことがあるのですが、今回改めて書くのは先日某大手呉服チェーン店の社長と財務担当者が逮捕されたためです。報道だけでは詳細がわかりませんが、逮捕理由になったのが「国の許可を得ずに高額な着物を客に売る際、2回以上に分けて前払い金を払わせた上で商品を渡した疑い」という割賦販売法違反であるという事実に衝撃を受けた呉服店も多いのではないか、と思います。 犯罪擁護と取られかねないため、当初はこの件については触れないでおこうと思ったのですが、やはり業界の話をぶっちゃけてきたこのメルマガで取り上げないわけにはいかないと思い直して書くことにしました。ただ、読んでいただく前に少しだけ心に留めておいていただきたいことがあります。 ・決して犯罪を擁護、容認しているわけではありません。 ・今回の逮捕はその先にある次々販売をやめさせるための別件逮捕という一部報道もありましたが、この販売会社については直接の交流はなく詳しいことは存じ上げませんし、次々販売についても実際に行われていたかどうか直接見聞きしておりませんのでそのことについても触れません。 ・上記の割賦販売法に抵触したとされる行為のみについて、あくまでも一般論として書きます。 ・法律家じゃないので間違っている部分もあるかもしれません(というか多分ある)ので法律の専門家、もしくはローン会社の法務担当者様からのご指摘はありがたくお受けいたしますので何でもご連絡ください。次週のメルマガで訂正します。 というわけで本題に入ります。
11月29日、Yahooニュースを見て衝撃を受けました。関西一円でチェーン展開している大手呉服店の社長が逮捕されたということに驚いたのはもちろんですが、その逮捕理由が「国の許可を得ずに高額な着物を客に売る際、2回以上に分けて前払い金を払わせた上で商品を渡した疑い」という割賦販売法違反の容疑だということにさらに驚いたのです。報道だけでは詳しくわからないのですが「2回以上に分けて前払い金を払わせた」ということは店側が商品を預かって、まだ渡していない状態で2回以上お金を払わせると罪になる、ということでしょうか。ちょっと腑に落ちない部分がありますが、今回のメルマガはこれを前提としてお話しさせていただきます。 ここで割賦販売についてWikipediaで調べてみますと 「割賦販売には、ある程度代金が積み上がってから買主に目的物を引き渡す場合(前払い式、一例:百貨店の友の会など)と、最初に目的物を買主に引き渡してしまう場合(後払い式 = 信用販売)がある。 前者の場合については、目的物を引き渡さない間に売主が倒産してしまうと、大勢の買主に迷惑を及ぼす。後者の場合には、売主が代金債権を担保するため、所有権留保を行ったり、違約罰を定めたりするなど、とかく経済的地位が劣り事情に疎い買主に不利過酷な条件が付されがちである。そこで、割賦販売法によって割賦販売に規制をかけることが要請された。」 とあります。要はお金を払ったのに商品が届かない、お金を払っているのに商品を引き渡さない、といったトラブルを防ぐために、力の弱い消費者を守ることを主たる目的として作られた法律ということですね。 そして割賦販売の定義についてはこうも書かれています。 「いわゆる自社割賦をさす。指定商品、指定権利、指定役務を購入者から2月以上にわたり3回以上に分割してあるいはリボルビング方式で代金の弁済を受ける受領販売形態(後の項・2008年6月に「これまでの「2か月以上かつ3回払い以上」の分割払いのクレジット契約に加えて、「2か月を超える1回払い、2回払い」も規制対象とする、と改正されたと記述)」 ふむふむ。おそらくこれに抵触したんでしょうね。
さて、ここで呉服屋独特の悪習「売掛金」についてお話ししたいと思います。 売掛金とは呉服店が販売した商品の未回収の代金をさします。少々お硬い言葉で書きますと、呉服店側は債権が発生し、お客様は債務が発生しているというわけです。ごく一般的な経済活動では店頭で10万円のものを購入するとその場で対価を支払って商品の所有権はお客様側に移転するわけですが、呉服屋は少々事情が違う場合がございます。 呉服屋というのは非常に古くからある商売で、当店は私で4代目、100年以上続いている店です。ちなみに某大手クレジット会社の沿革を調べてみましたら創業は1950年とありましたのでそれよりの30年古くから当店は存在していることになります。蛇足ですが京都の某大手呉服問屋は元禄時代(1688年-1704年)創業らしいですので当店などまだまだ若造ですな笑。 ここでローンを使って着物を購入する際のお金の動きを簡単に説明します。呉服店で30万円の着物を購入する意思を伝えると、呉服店とお客様との間に売買が成立しますが、お客様に手持ちの現金がない場合ローン会社に立て替え払いの申し込みをします。契約が成立したら数日以内にローン会社から呉服店側に商品代金が一括で振込まれ、お客様は利息を上乗せした金額を契約した回数に分けてローン会社に支払います。つまり、呉服店とお客様の間にローン会社が入り、三者間での取引になるということです。 余談ですが「ローン手数料◯回まで無料」というのはローン会社が手数料無料で請け負っているわけではありません。店側が負担しているため、契約が成立してローン会社から店側にお金が振り込まれるときに手数料分があらかじめ差し引かれるのです。 さて、そんな歴史が長いうえ、ある程度単価の高い呉服屋という商売。着物が日常着とされていた頃、低単価の庶民の着物が中心だったとは思いますが、一方で奢侈禁止令(しゃしきんしれい:贅沢を禁じ、着物の布地や染め色を制限していた)が出されるなど手の込んだ逸品も多く作られ、それらの価格はそう安いものではなかったと推測されます。例えば30万円の品物を購入して頂いた場合、10回に分けて毎月3万円ずつ店に持参していただく、というのはごくごく当たり前のように行われていました。 いや、行われていました、というような過去形ではなくおそらく現在も行われています。
何度かこのメルマガでも書きましたように、呉服店は固定客の割合が非常に多い商売なのですが、固定客というのは非常にありがたい反面、新しいシステムに変えようとした時に難しいということもあります。 世界初のローン会社が誕生したのは1950年、日本でも1960年にはクレジット事業が始められましたが、その後一気に分割払いを請け負う会社が日本中で認知されたわけではありません。このシステムがない時代は、呉服店側の立場からするとお客様のために仕入れた商品の仕入れ代金は全額支払わなくてはならない、お客様からは毎月少しずつしかお金が入ってこないというわけで資金繰りも大変でした。しかしローン会社が立替払いをしてくれれば販売した代金はすぐ店に全額入りますので、手元にお金が残るという点で非常にありがたく、何としても導入したいシステムでした。 私が呉服業界に入ったのは今から30年ほど前で、日本にローン会社が誕生してから30年ほど経っていましたが、購入を決めて下さったお客様がローンの申込用紙を出されて「そんなに私のことが信用できないのか!」と激怒されたのを目の前で見たことがあります。そのお客様が初めてのお客様だったのか、それまではローン会社を通さず店頭に少しずつ現金を持参されていたのか、もう昔の話ですので詳しいことは忘れましたが、書類を作成してローンを組むことに抵抗がある方が一定数おられたのは確かです。ローンというシステム自体まだあまり認知されていませんでしたし、聞いたことのない会社に住所、電話番号、勤め先はもちろん年収まで書いて提出するのですから、今ほど個人情報に敏感な時代でなくとも抵抗があるというのは理解できます。
ローンを組んで高額商品を購入するのがごく当然のことと社会的に認知されてきたのは、私の体感ではこの10年、20年くらいですかね。え?そんなに最近?と思うかもしれませんが、古くからある呉服店の客層は50代なら若手、60代、70代が多くを占めていますので世間の動きよりも少し遅くなるのは否めません。振袖専門店などは20歳前のお嬢様とそのお母様ですから若い方中心ですし、固定客ではなく常に新規のお客様相手に販売している店だともっと早くから難なくローンを活用しておられたと思いますが、年配の固定客相手に商売している店では新しいシステムはよく分からない、なんか面倒くさそうなどと敬遠されてしまいます。 いくら社長から「お客様にローンを組むように勧めてくれ」と言われても固定客が故に「ローン組まなきゃならないならいらない」「前はローン組まなくてもよかったのに今回はなんで?」と言われると無理には組ませることもできず、また販売員自身も「この前まで自社で分割払いできたんだから今回は自社割賦でしかたない、売れないよりは良いか」という思いもありなかなか導入できなかったのです。 長くなったので来週に続きます。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。