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足袋の履き方からはじまり関東と関西の違いなど

公開日:2025/03/07
今週のお題は「足袋の履き方からはじまり関東と関西の違いなど」です。先週このメルマガで少し書いたように当店はX(旧ツイッター)、Threads、FacebookなどSNSで毎日着物豆知識を配信しております。まだまだ若輩者ではありますが(この業界では50代なんて若手なんですよ笑)、一応30年ほど着物を販売して生活してきておりますのでその中で先輩方に教えていただいてきた知識をお伝えすることができれば、と思って続けております。 とはいうもののこのメルマガで何度も書いておりますように、着物は情報伝達手段がほぼないような時代に価値観が固まったものなので非常に地方差が大きいのが結構困りものです。現代はSNSで北は北海道、南は沖縄まで…いや、世界中どこにいてもその距離を感じないほど情報伝達の速度が速くなっておりまして、SNS上で知り合った方と普通に会話していたら、実は海外に住んでいた、なんてことも珍しくありません。 私が配信するのはあくまでも私がこの関西圏で教えてもらってきた価値観であって、日本全国どこにでも通じるものではないので、SNSのプロフィールのところには「毎日着物豆知識配信してるけど、大阪周辺のことで日本全国どこでも同じかどうかは知らんで」と書いているのですが、なかなかそんなところまで見ないですよね。というわけで、たまに「それは間違いだ!」なんて指摘をいただくのですが、日本全国全て同じなんてことはあり得ないので「ああ、そういうところもあるのね」という程度に考えていただけるとありがたいです。 先日、足袋の豆知識として「正式(フォーマル)は5枚こはぜ、普段着は4枚こはぜ」と書きましたところ「そんなことはない!」という意見を頂戴いたしました。どうやらその方の周りでは足首部分が短い方が粋とされているようでこれを聞いてちょっと驚いたんですよ。なぜかと言いますと私の周りでは「足首が見えるのはカッコ悪い」なんて言われておりましたので。
着物は関東と関西ではかなり大きな違いがあります。長襦袢や帯の仕立て方、帯の巻き方…は関東巻き関西巻きとありますがこれはおそらくただの名称で関東と関西で分かれているというわけではないと思いますが…。関西で売れる商品ははんなりした柔らかい感じの色合い、関東は粋な感じの柄、などと色柄の好みも全く違います。当店などネットショップでは当然日本全国のお客様を相手にしているので、色柄の違いを意識して仕入れる、なんてことはありませんが、私のような関西の店主が「自分の好きな柄」を選ぶとはんなり系が多くなってしまう、といったことはあると思います。まあでもこの辺りも情報社会では次第に混じり合って地方差がなくなっていくんでしょうね。 話を戻します。 私はこの業界に入ってからずっと着物から足首が見えるのはみっともないといわれてきました。そのため、足首が見えないように、そして裾さばきがいいように膝下から足首までの和装ストッキングというのがあります。当店でも以前は扱っていたのですが、最近はそこまでこだわる方もおられなくなったので扱いを辞めてしまいましたが、いま楽天を検索してみたらいくつかヒットしましたのでまだ流通はしているようですね。 正直、足袋の足首部分が短くて足首が見えてるのが粋という意見を聞くのは初めてで驚きました。いままで「みっともない」とされてきたものが一転180度変わって粋とされているんですから。コペルニクスも真っ青の完全真逆の変化じゃないですか。和装ストッキングを履いてまで足首が出るのを嫌うのが当たり前だったのが見せるのが粋って…。関西以外に住んだことのない私からすれば本当に驚きの感覚でした。関東と関西で様々な違いがあるのは心得ておりましたが、まさか足袋のこはぜの数、ひいては着物の裾の長さの感覚の違いは初耳だったんです。 というわけで「これはメルマガのネタとしていいかもしれない!」と思ってX(旧ツイッター)とThreadsで質問してみました。 ・お住いの住所(大体の地方・関東、関西など) ・4枚が普段着用、5枚がフォーマル用という認識があるかどうか ・足首が見える方が粋か、それとも見えるとみっともないか
Xで108の回答、Threadsで24の回答をいただきました。こんな場末のリサイクル屋のアンケートに答えていただき本当にありがとうございました。かなりたくさんの回答を頂戴いたしましたのでお一人お一人に返事はできておりませんが頂いたご意見は非常に興味深く、全て読ませていただきました。 まず、こはぜの枚数が5枚がフォーマル、4枚が普段着、という部分においては日本全国概ねその認識のようですが若干関西の方が根付いているような感じでした。ただ、以前にも書きましたが5枚こはぜは国産のものが多く、どうしても安い海外製のものが多い4枚こはぜに比べて割高に感じてしまいます。関東の方では5枚こはぜはほとんど販売されていない、という答えも頂きましたが、これは関東の方が5枚こはぜを履く文化がない、というよりも単に呉服店の経営方針の要素が強いように思います(実際に関東の呉服店に聞いたわけではないのですが)。 足袋を扱うのって意外と在庫リスクがあるんですよ。女性の小足の21.0cmから男性の大足の29cmまで揃えるとなると、靴下と違って伸び縮みしないので0.5cm刻みで17種類も揃えなければなりません。全てのサイズは5枚単位で仕入れるので85足×5=425足、それを4枚こはぜ、5枚こはぜの二種類揃えるとなると850足。他にゆったり型、細形などを揃えようとすると資本力の小さい呉服店にとってはかなりの負担になってしまいます。 また、5枚こはぜは私の知る限りでは国産メーカーのものになってしまいますので(特には調べていないので5枚こはぜの中国メーカーがあったらすいません)4枚の安い中国産と5枚の国産とでは2倍-3倍の価格差があり、当店では昔は4枚と5枚両方扱っていたんですが5枚が売れなさすぎて安く処分してしまいました。
では、足首が見える方が粋か、みっともないか、という設問ですが、曖昧な回答も多かったので正確な数字で比べるのは難しいですがちらりと見えるのが粋、というのは圧倒的に関東の方が多かったように思います。先ほど書いたように関西の方では足首が見えるのはみっともないという認識で足首を隠す和装ストッキングを履く方もおられるのに関東では真逆の価値観で非常に興味深い内容となりました。関西は着物の裾を踏んでしまいそうになるぐらい長めに着付けるのも足首が見えるのはみっともないというところから来ているのでしょうね。一方東京銀座のホステスさんだと足首が見えそうなぐらい(関西と比べて)長めに着付ける方が多い、ということでした。 昔九州に住んでいて今は関東、愛知県出身で京都に住んでます、など様々な方がおられて、ここでもやはりかなり人が移動していて、当然親から教えられた文化を移動した先に持っていき、またその子供が同じ価値観で同じように教えられて育ち、その結果次第に日本全国標準化されていくのだと思いますが、こういった着物の着方一つを取っても短めに着る、長めに着るなどの違いが垣間見ることができて非常に興味深かったです。 着物の裾の長さ一つを取ってもこれだけ色々な意見があるので、美意識なんてその人それぞれ。もちろん着付教室で覚えたら「その教室が考える一番綺麗な着付け」を教えてくれますが、それはあくまでもその着付教室の中の話。着付教室を一歩出たら「こういう着方でなければならない」ということはありません。たかが着物、いろんな価値観があります。ある地方ではみっともないとされているものが別の地方では粋とされており価値観なんて人それぞれなんですから、自分の感覚で綺麗に着られたと思ったらそれでいいんじゃないでしょうか。だからこそ着物は奥深くて面白いと今さらながら感じる今回のテーマでした。 最後にいただいたご意見で興味深いものをいくつか箇条書きで書いて終わりたいと思います。またこういった面白い発見がありましたがいろんなご意見を募集したり、メルマガでも取り上げますので、よろしければ当店のX、またはThredsをフォローしていただければ嬉しく思います。
関東…お神輿とか祭りなら4こはぜ。神輿スタイルは男の生足がかっこいいからそこから来ているのでは? 東京…丸出しは野暮、でもチラリは粋 九州…足首見えるのは絶対NGなので裾を踏むぐらい長く着る 神奈川…足首見えるのが粋、というのは裸足に下駄の時のみの話では 群馬…袴履いてる時に足首が見えるのはありえない。敵に足さばきを見せないため 東海…浴衣以外足首が見えるのは野暮 九州…幼く見えるような気がして足首が出ないように着付ける 東京…そもそも足袋は履かないのが粋 などなど…。 アンケートに回答いただきました132名の方々に厚く御礼申し上げます。この度はありがとうございました。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。