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夏の長襦袢を考える

公開日:2025/04/18 更新日:2025/04/18
今週のお題は「夏の長襦袢を考える」です。先日から新着情報のところに記載しております通り、海島綿の長襦袢が復活いたしまして、ありがたいことにぼちぼちと売れています。以前は老舗メーカーの千總さんから販売されていたのですが、残念ながら着物人口の減少に伴い、利益を出すのに必要な数量が販売できず、数年前に製造中止になってしまいました。どうやら聞くところによるとライセンス料はかなり高額だったらしくそれが払えなくなったということでして…。とても人気だったので残念だったのを覚えております。 海島綿=シーアイランドコットンは、ちょっと変わった流通経路というかライセンス供与があるらしく、海島綿を使った製品を作っている会社1社につき1アイテムのみ作るのを許可するということで長襦袢は千總さん、足袋は福助足袋。実は着物も作られていて確か奄美大島の会社がライセンスを持っていたと記憶しているのですが、海島綿の着物は1回見たことがあるだけですので今でも作られているのか、まだライセンスを持っておられるのかわかりません。 あ、そうそう、今週は「夏の長襦袢を考える」でしたよね。話を戻します。 これから次第に気温が上がって夏に向かっていくのですが、呉服屋にとっては受難の季節です。いつも仕入れに行くオークションを開催している親方は「1年は10ヶ月やと思っとかなあかんで、7月、8月なんて着物全く売れへんからな」なんていうんですが本当にその通りで、7月8月は店頭もネットも閑古鳥でもうこの季節は仕事休んでどこかにバカンスにでも行こうかというぐらい売れない時期なんですよ。特にお嫁入り道具になんとなく持たされる袷の着物と違って夏物なんてガチユーザーしか買わないから状態の良いのも少ないですし…。あー、もう長期休暇とってバカンス行きたい。 このメルマガを読んでいる着物マニアの方々は「暑いのは洋服でも暑いんだから私は着物を着るぜ!」という方もおられるでしょう。しかしながら夏は当然汗をかいてしまうので、上に着る長着(着物)はまだ良いとしても、中に着る長襦袢の素材に非常に悩むのが夏なんですよ。
まず大前提に、夏場はできるだけ着るものを少なくしたい、と思うのが人情なんですが、これは正しくもあり、間違ってもいます。もちろん着るものが少なくなれば多少は涼しくなりますので、うそつき襦袢(注)などで1枚でも着るものを少なくするのも良いと思いますが、これは汗をかかないという方向きであってどちらかというと汗かきの方にはあまりお勧めできません。 注:うそつき襦袢とは、胴の部分が肌襦袢のように晒の生地になっていて、衿と袖だけが長襦袢のようになっています。つまりちゃんと着物を着ると全く見えない胴の部分は晒になっていて、着る時に見える衿と袖の部分は長襦袢を着ているように見えます。通常は肌襦袢を着て長襦袢を着るのですが、うそつき襦袢を着ると1枚少なくなるという昔の人の知恵なんです。うそつき襦袢ってのもなかなかのネーミンズセンスですね。 なぜうそつき襦袢は汗をかく方にはお勧めしないかと申しますと、うそつき襦袢の上に着物を着ると確かに着るものは1枚でも少なくて多少は涼しいかもしれませんが、夏場なんて裸で歩いてても暑いですから汗かきの方ですと水滴のようにポタポタと汗をかくこともあるでしょう。そうすると汗かきの人ですと一番外側の長着にまで浸みてしまうんですよ。もちろんポリエステルや木綿ですと家庭で洗えるのでじゃぶじゃぶと水洗いできるのですが、絹ですとそうはいきません。専門家に汗抜きをしてもらわないと、次に着る時に潮を吹いたように白くなっていることもあります。 ですので、汗をかく方は肌襦袢は汗を吸い取る工夫をした「汗取り襦袢」にして、その上から長襦袢、長着を着て長襦袢や長着にしみ込まないようにするのがお勧めです。汗取り襦袢は色々なメーカーから出ておりますので興味のある方は検索してみてください。どの商品も大体脇のあたりなど汗をかきやすいところに厚手の布をつけて長襦袢や長着に汗がしみ込まないような工夫がされています。
そしていよいよ長襦袢のお話です。 まずはポリエステルからお話いたしますと、最近は爽竹(そうたけ)など従来のポリエステルと違う、着心地の良いものも多数販売されるようになってきました。ただ、残念ながらポリエステルは汗を吸わないんですよ。この「汗を吸わない」というのがあくまでも私の感覚ではありますが少々苦手でして、身体と長襦袢の間をツツーッと汗が伝っていくのがどうにもこうにも不快なんです。もちろんこれはお好みですので気にならないという方もおられると思います。夏場の長襦袢としては値段は一番手頃でお手入れもネットに入れて洗濯機にポイでじゃぶじゃぶと洗えるので清潔ですし、生地も丈夫ですからあまり着心地にはこだわらないという方は試してみても良いと思います。 次に人気は麻の長襦袢です。これはちょっと前までは一番のお勧めの生地でした。ポリエステルほどではないですが値段はそこそこ手頃ですし、何と言っても涼しい!麻の着物に麻の長襦袢を着ていると、まるで体の中に風が通るようなそんな涼しさを感じます。少ししわが寄りやすいんですが、麻という生地は「シワを着る」なんていう人もいるぐらいしわが寄りやすい生地で、むしろシワが本物の麻である証拠なんだ、と思いながら着るのが正しい麻との付き合い方です。 若干風合いがチクチクと感じる方もおられるかもしれません。肌の弱い方は少し敬遠されるかもしれませんが、何度か洗っているうちにしなやかで柔らかくなりますので、持っているもののつい敬遠してしまう方は何度も洗ってみると良いかもしれません。何度も何度も洗っていると結構柔らかくなりますが、それでもやっぱりチクチクして苦手、という方もおられるのでそういう方は次の木綿の長襦袢を検討してみてください。 ところで麻は洗うと縮むと言われていますよね。なのでお仕立て前に十分水通しをしてしっかり縮ませてからお仕立てにかかるのは鉄則です。当店は必ず2回水通しをしておりますが、麻はそれでも何度か着て洗ってを繰り返しているうちに縮みます…と思う方が多いんですが、そうじゃないんですよ。
麻は確かに縮みます。以前ネットで「麻の長襦袢持ってたけど縮んでしまったから捨てた」というのもみたことあるのですが、そんな勿体無いことしちゃダメです!麻という生地は確かに縮むんですが、半乾きの状態で手で引っ張って形を整えてやればまた同じ長さどころか元の長さ以上にも長くなります。ただし、元の長さ以上には伸びますが生地の量は一定ですのでその分横幅が取られて狭くなってしまうので伸ばしすぎにはご注意ください。もしいま少し縮んだ麻の長襦袢をお持ちでしたら早速水の中にドボンと浸けて伸ばしてみてくださいね。 せっかく麻の長襦袢ですので、半衿も麻のものを使いたいのが人情ですよね。以前にも麻の長襦袢をお仕立てさせてもらった時に半衿も麻にしてほしいと言われたんですが、その当時は当店の取引先では麻の半衿は手に入らず、仕方なくお客様にご自身でネットで購入してもらって送ってもらったことがあります。当時は楽天で検索してもほとんどなかったような記憶がありますが、いま見てみたらいろんな色のカラフルなものがたくさんありました。顔に近い衿元に色のついたものを持ってくると顔色がパッと明るくなったりするのでいろんな色のものを試してみたいですね。 そして最後は冒頭に書いた木綿の長襦袢。7-8年前までシーアイランドコットン=海島綿(かいとうめん)という生地で綿絽の長襦袢が販売されておりました。とてもしなやかで優れた生地で人気が高かったのですが製造中止になってしまいました。海島綿の長襦袢は販売の権利が色々と難しいらしく、1業種1社1アイテムと決められており、海島綿は千總さん、足袋は福助、そして実は海島綿の着物もありまして確か奄美大島の会社が持っていて海島綿の着物も実際に見たことがあります。このようにアイテムごとに作る会社が決められていて厳密に管理されているようで、ライセンス料も結構高額らしく、そのライセンス料がペイしなくなったということで海島綿の長襦袢の製造は打ち切られて以前の千總さんの長襦袢はもう手に入りません。
…と思ってたら先日京都の某問屋が4月初めの展示会(業者向け)の案内を持ってきたらその隅っこの方に「海島綿長襦袢」と書いているではないですか!「なんだこれ、もう千總さんでは作れなかったはずなのに…」と思って問い合わせてみたらなんと新しい生地「アメリカンシーアイランドコットン」で新発売されたとのこと。生地は紗の生地と市松模様の生地の二種類、色は9種類で合計18種類になって帰ってきました。 紗の生地の方は一般的な紗の生地よりも若干厚めで、どちらの生地も夏だけじゃなくスリーシーズンお召しいただくことを前提に作っているようです。最近はもう衣替えはうるさく言わずに気候に合わせて変えましょうという考え方が一般的ですのでスリーシーズン対応はいいかもしれないですね。紗の生地は一般の紗よりも少し厚めの生地なので、昨日店頭にこられたお客様は「これだったら私は年中着るわ」とおっしゃってました。もちろん家庭で洗えますので汗をかく夏にはぴったりの長襦袢です。 最後には宣伝くさくなってしまいましたが、ただいま当店一番のお勧めの長襦袢ですので是非お早めにご覧ください。価格は決して安いものではありませんがその分満足度は高いです。もしお仕立てが必要ないという方は税込44000円で販売することも可能です(これはメーカー希望小売価格の大人の事情でどの店で買っても同じようです。まだネットでもあまり販売されてませんが)。 これからどんどん暑くなってきますからね。夏場はあまり売上が取れないリサイクル呉服店としては辛い季節ではありますが、また長襦袢以外にも夏物を色々仕入れて用意して紹介いたしますので夏場も当店を宜しくお願い致します笑。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。