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謎マナー爆誕の瞬間を見た

公開日:2025/01/31 更新日:2025/01/31
本日のお題は「謎マナー爆誕の瞬間を見た」です。着物のドレスコードは難しい、ややこしい、なんて言われますが、私からすると洋服の方がずっと面倒くさくってややこしくってわかりにくいと思うんですが、一方和服では変なマナーや意味合いをこじつけて、「謎マナー」がまことしやかに言われ、どんどんとややこしいことになってしまっているような気がします。 一番に思いつくのは「着物に描かれている花は実際にその花が咲く季節に合わせなければならない」という謎ルール。最初に言っておきますがこんなルールないですからね。何度も何度もSNSやメルマガで拡散させてるつもりなんですが、私の拡散力なんてたかがしれているためなかなか浸透しません。まあこんな超零細のしがないリサイクル屋が言ったところであまり影響力はないので仕方がないですが、それでも私は言い続けますからね!着物の柄と季節なんてなーんの関係もありませんので好きに着てください!!!! 「花の季節と着物の柄は合わせなくてはならない」と信じ込んでいる方にこう言うだけではちょっと不親切かと思いますのでもう少し解説しますね。 花の季節と着物の柄を合わせたら、それは楽しいかもしれないですね。今日はお花見だから桜の柄の着物を着て行こう、5月だから菖蒲の柄の着物を着て行こう、そうして移ろいゆく日本の四季を着物の柄で楽しむのは着物の楽しみ方の一つであることに何の疑いもありません。洋服だってクリスマスの時期はグリーンと赤を使ったコーデでクリスマスを楽しむ、オレンジ色を身につけてハロウィンを楽しむ、それと同じように着物だって季節を感じて楽しむのは1ランク上の楽しみ方という感じがしますよね。 でも洋服で12月は赤とグリーンの色の入った服を着なければならない、それがマナーです、なんて言ってる人がいたらあちこちからツッコまれまくりますよね。それと同じで着物だからといって季節を感じる柄を「着なくてはならない」ということはありません。そんなこと言ってたら何枚あっても足りませんよ。あんなのめちゃくちゃたくさん着物を持っていて、着物の楽しみ方はいろいろやりつくしてしまった方の楽しみ方ですから普通の人は「この花柄は何月に着たらいいんだろう」なんて考える必要はありません。
もし本当に着物と花の季節を合わせなければならないのなら、着物を作ってるメーカーも「この着物は3月-4月用です」と書いているはずですが、そんなことを書いている着物は見たことがありません。つまりそういうルールはないんです。でも着物=優美なものというようなイメージがあるため、まことしやかなことをいうと優美なイメージと結びついて「なるほど、そうなのか」なんて変に納得してしまい、浸透してしまうんですね。 先日、某SNSを見ていたら「小紋は結婚式や披露宴に着ていったらダメなのか」と言う質問を目にしました。一般的なドレスコードですと小紋はあくまでも普段着なので結婚式や披露宴には不向きです。しかし最近は着物を着るのは決して楽な手を抜いた装いではないため、着物を着ること自体フォーマルという考え方があるのも事実です。洋服に置き換えるなら、昔は訪問着はパーティドレス、小紋はTシャツにジーンズとされていましたが、現代は小紋はビジネススーツぐらいの格はあるのでは、なら結婚式に行ってもそれほどマナー違反というわけではないという方もいるかもしれません(注)。 注:とは言っても小紋はやはり普段着とするのが一般的な解釈ですのでこのメルマガを読んで「もう小紋は結婚式に着ていってもいいんだ」という解釈はダメですよ。フォーマルの装いは周りの調和が大切なので、ひとりだけ独自の解釈で「普段着とされる着物」を着ていくと、招待する側にとっては「何で普段着で来るの?」と感じる方もおられる可能性は高いので、どうしても着たい場合はその場の一番発言権のある人(例えば姑さんや親御さんその他)にお伺いをたてる方がいいと思います。 ところが、ある人が着付け教室の先生に聞いてみたところ「小紋は柄が切れているでしょう?それは縁が切れるということを意味していて縁起が悪いから小紋は着ていってはダメです」と言われてなるほどと思った、と書いていました。
うーむ、そんな話は聞いたことがありません。確かに訪問着など絵羽ものと違って柄が縫い目で途切れていますが、それと人の縁を結びつけるって一体どんなこじつけなんですか汗。そんなややこしいこじつけじゃなく、元々からフォーマルの場に着用するようなものではないのです。現代は着物という服装から遠ざかって、普段の生活から縁遠いものになってしまったので、普段着の小紋でも着ると特別感があるためフォーマルでもいけそうな気がしますがあくまでも普段着なのです。ややこしいこじつけなんてしなくてもずーっと昔から普段着なんですよ! そして私が驚いたのはその投稿者が「なるほど」と納得していること。先ほど書いたように誰かが「何となくまことしやか」なことを言ってしまうとそれを聞いたご自身のイメージと結びついて「まことしやかなルール」となり何となくそれっぽく感じて、冒頭に書いた「花の季節と着物の柄は合わせなければならない」と同じように定着してしまいます。 着物のルールなんて、この数十年の間に出来上がったものですし、そもそもメディアが発達する前にできたものですからかなり地方差があります。もう一つ言えば、右に行ったり左に行ったり、ふわふわとしながら少しずつ変わり続けているものです。お葬式に振袖を着る地方もありますし、家紋は関西では丸を外して入れます。長襦袢の襟や衽の付け方、帯の仕立て方なども違います(仕立て方に関しては今ではほぼ統一されています)。なのでわざわざ調べないとわからない程度の「誰かが言っていた」「SNSで見かけた」程度のマナー(?)はほとんどがどこかのマナー講師が作ったヘンテコルールである可能性が高いです。 もし不安でしたら着物文化検定公式教本の「着物の基本」を読んでみてください。
今まで呉服業界はドレスコードについて業界発信のものはほとんどなかったと思いますが、全国に散らばる様々なルールを業界の見解としてまとめたのがこの「着物の基本」という本だと考えています。着物文化検定はそもそも全国に散らばる様々なルールをまとめて「こうしておけば間違いない」という一つの見解を作るためのものだと中の人から聞きました。私は「たかが着物の変なルール全部無くしてしまったら?(もちろんフォーマルカジュアルの違い等基本的なものは残した上で)」と言ったんですが、これほどいろんなルールが根付いているものを全て無くしてしまうのは難しい、ということで着物文化検定が作られ、その教則本として「着物の基本」が発売されました。 ですから、この本に載っていればそれは公式見解ですし、載っていないならそんなルールはない、ということです。もちろん着物の柄と季節は合わせなくてはならないという謎ルールなんてありませんし、小紋の柄は繋がっていないから縁を切ることにつながるというこじつけも書いていません。 着物のことがよくわかっていない時は知らずに恥ずかしいことをしないようにと思ってつい安全マージンを多くとってしまいがちですが、基本洋服でやっていいことは着物でもやってもいいと考えても大丈夫だと思います。もっとも、着物のフォーマルカジュアルという区別自体初心者の方にはつきにくいかもしれませんので、その辺りはベテランの方に聞けば親切に答えてもらえると思います。 冒頭にも書きましたが、着物よりも洋服の方がよほどドレスコードは面倒くさいと思うんですよ。面倒くさくないと思うのは多分ご存知ないからであって、洋服は着物よりもかなり細かいルールが決められています。おそらく欧州は周りを他国で囲まれて一つ対応を誤ると殺し合いの戦争になっていたことだってあるわけです。しかし広い欧州では様々な価値観があり、こちらの国ではしっかりおもてなしをする服装であっても他国では失礼にあたるかもしれません。でも共通認識で相手に礼を尽くす服装が決められていれば、価値観の違いで気を悪くされることもなく無用のトラブルを生むこともありません。
また、洋服は普段から着慣れているため、ビジネススーツにサンダルはおかしいなど、無意識のうちに判断して格を合わせることができますが、普段からの知識のない着物はそういう判断基準がなく難しいと感じてしまうのでしょう。そしてその難しいと感じるときに謎マナー講師がもっともらしいことを言うと信じてしまい、それがSNS等に拡散されて…と言うことが起こりうるのではないか、と分析します。 知らない、知られていないからこそ、知っている者からすると「えええええー?」と思うような謎マナーが発生する余地が出てくるので、もう少し気楽に着られるような、普段から身近に「和」があるようなそんな世の中にしていきたいと、着物に携わるものとしては思っておりますが…なかなか劣勢ですね笑。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。