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絹の着物にポリエステルの胴裏その2

公開日:2025/04/04 更新日:2025/04/18
今週のお題も「絹の着物にポリエステルの胴裏その2」です。先週は黒留袖や黒紋付(喪服)に限っては、昔はお嫁入り道具にこれらの着物を持って行ったけれど、その着物の性質上初めて着るのは10年、20年後になることが多く、また当時の胴裏の精製技術が低かったことで初めて着るときには胴裏が完全に茶色く変色していることが多く、それを避けるために変色しないポリエステルを使いました。noteにバックナンバーを掲載しておりますので先週お読みいただいていない方はまずnoteをお読みいただければ、と思います。 さて、先週も書きましたが黒留袖や黒紋付はあくまでも変色防止のためにポリエステルを使用する、ということを書きました。最近のポリエステルは東レシルックに代表されるようなかなり風合いの良いものも作られておりますのでちょっと触っただけでは絹と区別がつかないようなものも流通しております。先週金曜日に仕入れの競り市に行ってきたのですが、プロ同士の仕入れの現場でも「これポリかな、絹かな」ということがあるくらい、絹とポリエステルの判断が難しいものもあります。特に夏物のバチ衿は判断しにくいことが多々あるんですよ(注)。 注:ポリの着物に絹の衿裏をつけることはまずないので、広衿の衿裏の材質である程度推測できます。 もう一つ、裏地にポリエステルが使われることが多い着物が振袖です。これが今週のお題です。といってもこれはあくまでもリサイクル店で販売されているものに限った話であって、一般的な新品呉服店で誂える時には裏地にポリエステルを使うということは少ない…というかほとんどないと思います。 ネットの中では悪者にされがちな呉服店ですので(笑)この手の話になると高い振袖にも安物のポリエステルの胴裏をつけてセット物のコストを抑えている、なんて勘ぐられてしまうのですが現実としてお客様に振袖○点セットというように販売されていて、胴裏はもちろんお仕立てまですべてコミコミの価格のセット販売の場合でコストダウンのために安いポリエステルの胴裏を使うというのはあまり聞いたことがありません。もちろん絶対ないとは言いませんが。
先ほど書いたようにポリエステルの胴裏もかなり品質が良くなっているのですが、やはりポリエステルという言葉の響きが悪い…というよりも正絹という生地への信仰は根強いです。振袖販売のDMやサイトに「振袖セット○○万円!」と打ち出している場合、その内訳も書かれていると思うのですが胴裏はポリエステル、なんて書いたらその振袖セット全体が安物に見られてしまうことになってしまいます。 一方、東レシルックなど上質なポリエステルと正絹の価格差は意外なほど少ないです。しがないリサイクル屋なので振袖セットを仕立てることはほぼなくなってしまいましたが、振袖を仕立てる1枚分の胴裏は仕入れ値で1万円未満程度じゃないでしょうか。また、私の新品屋時代は胴裏はメーカーから14丈ものを仕入れて裁断しながら使ってましたので1枚当たりの単価にするともっと安いかもしれません。 対して東レシルックなど上質なポリエステルは確かに手触り、風合いは非常にいいですが高いんですよ。いろんな商品があるようですが、これまたしがないリサイクル屋なので最近シルックの振袖用胴裏を仕入れたことがありませんが、仕入れ値で4000円-5000円といったところでしょうか(間違ってたらすいません)。ということで「胴裏にポリエステルを使っている」というマイナスイメージを持たれることを覚悟してまで胴裏にポリエステルを使う理由がありません。 試しに先ほど楽天で「胴裏 振袖用」と検索してみたところ、ポリエステルと正絹とあまり値段が変わらないようで、やはりそんなところで価格を抑えたところであまり意味が見出せません。 とまあ、胴裏の価格事情をご理解いただいたので、次にリサイクルの振袖事情をお話しいたします。 リサイクル店で販売されいている振袖って、身丈や裄が長く作られているものが多いと思いませんか?小紋や紬、訪問着などの裄は63cmや64cm程度が多く、66cmがあればそこそこ長い、68cmもあればかなり少ない部類になりますが、振袖に限って言えば68cmは当たり前、ちょっと大きめのものになると70cmを超えるようなものも多々ございます。
実はリサイクル店で販売されている振袖の多くはレンタル店から放出されたものがほとんどというのが私の印象です。小さいサイズは背の高い方には対応できないことは多いですが、その逆は(ある程度は、ですが)小さい方にも対応しやすく、レンタルは概して大きめのサイズで仕立てる傾向があります。逆に150cmなど小柄な方用の振袖が手に入りにくいという印象なんですよ。振袖に限っては現代は袖丈は床スレスレにするのが主流なので、大きめのサイズで床スレスレになるような袖丈にすると小柄な方は床掃除をしてしまうことになるのでちょっと心配なんですが…。 それはさておき、リサイクル市場に流れてくる振袖の主な供給元はリサイクル店であることは間違い無くて、先週金曜日の仕入れの場でも今年の成人式が終わって役目が終わったであろう振袖が多数放出されておりました。 で、リサイクルの振袖に限ってはポリエステルの胴裏が使われていることが非常に多いんです。これはもう完全にコストを抑えるためであって、とりあえず着物として仕立てられるならできるだけ安くあげたいというレンタル屋さんの思惑がよくわかります。 先ほど、胴裏は意外なほど絹とポリエステルでそれほど仕入れ値は変わらない、と書きましたが、これがレンタル店だと話が違ってきます。レンタル店は大手ですと1回に100枚単位で仕立てるため、1枚単位だと2000円-3000円の価格差であっても100枚、200枚一度に仕立てるとなると20万円、30万円の価格差になってしまいます。この金額になると少し印象が違ってきますよね。かくしてポリエステルの胴裏を使ったレンタルの振袖がリサイクル店に放出されて、当店のような店の店頭に並ぶことになります。 訪問着のレンタルももちろんあるのですが、振袖のように一大マーケットではなくごく小さい市場ですし、成人の日に日本全国一斉に着るなんてこともありません。ですので一度に大量に仕入れるのではなく着用感の目立つもの、汚れたもの、柄が古くなったものを少しずつ新しいものと入れ替えていくという印象ですので絹を使っているように思います(新品屋時代、レンタルもやっておりましたがレンタル専門店ではなくそれほど大々的にやっていたわけではありませんのであくまでも印象です)。
というわけで、二週にわたって絹の着物にポリエステルの裏地をつける是非を書いてきました。黒留袖、黒紋付に限ってはコストダウンではなくあくまでも黄変防止なので、かなり上質の風合いの良いポリエステルが使われることが多いと思いますので、リサイクル店で裏がポリエステルの黒留袖、黒紋付を見かけても、粗悪品などではなく一般的な手法であると考えて良いと思いますので安心してお求めください。最近は絹の精錬技術がかなり進んで黄変も最小限で済むようになっているので、ポリエステルをつける必要はないように思うのですが、一度定着したものはなかなか変わりませんね。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。