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着物の汚れ対策

公開日:2024/10/26 更新日:2024/10/26
■着物の汚れ対策 本日のお題は「着物の汚れ対策」です。絹の着物は着心地はいいけれど家庭で洗濯ができないのでお手入れにお金がかかるのが玉に瑕ですよね。ポリエステルや木綿はネットに入れて洗濯機に入れれば洗えるんですが、絹ものと比べると流通量が少なくて色柄の選択肢が狭くなってしまいます。木綿の着物のリサイクル品なんてまず見かけませんからね。 もうすでに洗える絹は実用化されているし、当店でも扱っているのですが、なぜか特定のメーカーの商品だけで一般的にはならないのはどうしてでしょうか。洗える絹がメジャーになれば少しでも着物が身近になるのではないか、と思いますが今までの「洗える絹」の反物をみるとぼかしや柄が染められていたとしても鮫小紋程度で、どちらかというと単純なものばかりで花柄などの友禅技法のものはあまり見たことがないので、複雑な柄を描くのが難しいのではないか、となんとなく思っているんですが…。 呉服に携わるものとして洗える絹がメジャーな生地になるのを待ち望んでおりますが、残念ながら今のところ難しいと言わざるを得ないので、今回は絹の着物のシミ抜きや汚れ落としなどについてお話しさせていただきます。このメルマガを読んでくださるようなマニアな着物ファンである以上、どうしても絹の生地とは付き合っていかなくてはなりませんので…。 なぜ絹の着物は洗うことができないか。それは着物の生地でごく一般的な縮緬という生地がお蚕さんから吐き出される糸を強く撚り合わせて作るものですからそこに水を触れさせてしまうと生地の状態が変質してしまうからです。また、絹という生地の特性上、濡れると摩擦に極端に弱くなってしまい、濡れた状態で擦ってしまうと表面がささくれ立ってしまうという厄介な特徴も持っております(注)。プロの染め職人でも釜の中に入れて染める時に釜の中で擦れてしまうということもあるらしいので素人が力加減がわからないまま擦るとほぼ間違いなく生地表面を痛めてしまいます。 注:麻や木綿は濡れると逆に強くなると何かで読んだような読んでないような…。なので濡れた状態で多少擦っても表面がささくれ立ったりというようなことはなく、安心して家庭で洗うことができます。
ただ、濡れた状態では摩擦に弱いとしても決して水を使うことが御法度というわけではありません。もし絹の生地が水を使うことが御法度でしたら大量に水を使用する友禅流しなどはできないはずですが、実際は川で水の中にドボンとつけて染料を洗い流してますよね(現在は環境への配慮から川での友禅流しは行われておりません)。なので擦れるのさえ気をつけていれば水に触れること自体が厳禁というわけではありません。 工房などにお伺いすると、水に浸けた縮緬の生地が天井からぶら下がっているのを目にすることがあります。水につけたものをそのまま自然乾燥させているものですがヨレヨレなんですよ笑。縮緬の生地は濡れると縮んで反物幅が一定になっておらずヨレヨレのフニャフニャ。色が綺麗じゃなかったらボロ布が引っかかってるような感じ(ちょっと言い過ぎ)。これを十分乾かした後に加工屋さんに持っていくと反物の幅を一定に揃えて綺麗な反物にしてもらえるのです。 先日某SNSで上階の部屋から水が漏れて反物が水浸しになってしまった、という相談がありました。反物は縮緬でしたので水をかぶってヨレヨレに縮んでしまっていたのですが、おそらく再度加工屋さんで幅出しをして貰えば元どおりになるはずです(注)。 注:ただし、先ほど書いたように水に濡れると極端に摩擦に弱くなってしまうので、濡れてしまっても慌ててタオルで拭いて擦ったりしないことが大切です。擦ってしまうとすぐに表面がささくれだったり、染料が剥げるなどして別の加工が必要になり、余計な費用がかかってしまいます。 さて、それでは本題に入っていきます。 まず着物が汚れてしまった場合、ただ単に生地の上に汚れが載っているだけの場合もありますので、できればその着物を仕立てたときについてきた余りの布で優しく払ってあげましょう。なければ清潔なタオルで軽く払うような感じで。濡れていないので多少擦っても大丈夫ですがあまり力を入れないように。力を入れてグイグイこすっても落ちないものは落ちません笑。エチケットブラシを使ってもいいですね。
それでも取れなかったら乾いた状態で消しゴムを使ってみましょう。これは少し摩擦が起きるので乾いた状態であっても注意が必要です。あまりグイグイ力を入れると生地が傷むので軽く軽く擦ってみてください。本当に軽くですよ!!運が良ければ糸の中に入り込んだ汚れも取れる場合があります。 残念ながら素人でできるのはここまで。これ以上になると試すメリットより生地を傷めるリスクの方が大幅に上回りますので手を出さずシミ抜き屋さんに持って行った方が安全で安く済みます。生地の上に載っているだけですと表面を軽く擦ったり、少し中に入り込んでいても消しゴムで取れる場合があるのですが、それでも取れないとなると汚れが糸の中まで入り込んでいる可能性が高いです。そうなってしまうとベンジンなどの揮発油で汚れを浮かしてブラシで掻き出す作業が必要なのですが、前半で書いたように絹は濡れると極端に摩擦に弱くなるのに、ベンジンで濡らした状態でガシガシ擦るという絹にとって最も危険な作業が必要になるのです。 危険な作業なのですがシミ抜きの職人さんは絹の生地を傷めずに、なおかつ汚れを掻き出す絶妙な力加減を見極めて作業しておられるので、これぞ職人芸なんですね。以前に職人さんに「素人はベンジンをケチって少ししか使わないからダメなんだよ、たっぷり使うとベンジンでブラシが滑るから摩擦が少なくなって生地が痛まないんだよ」と教えてもらったのでシミだらけのリサイクル品で実験してみましたが、シミは取れないしベンジンをたっぷり使うから輪ジミが大きくできてしまって、職人さんの偉大さを実感しただけで終わりました笑。 これまたかなり以前のことなのですが、素人でもシミ抜きができる機械を導入しようと検討したことがありました。価格は40万から50万ぐらいだったような気がします。自分でリサイクル品のシミ抜きができたら5000円ぐらいしか値段のつかないものでももう少し高く販売することができる、機械がそこそこ高くても毎日シミ抜きしたら1年ほどで元取れるやん、と思ってメーカーの展示会に見学に行きました。
上からベンジンを吹き付けると台の下からえらい勢いで空気が吸入されるもので、一切擦る作業がなくたっぷりのベンジンを使って空気と一緒にシミも吸引させるという原理でした。そこそこ綺麗にはなるんですがやはり強い汚れには対応できなかったことと、ベンジンの輪染みができるのでうまく周辺をぼかす必要がありましたが私はうまくできず(不器用・汗)導入を断念いたしました。 まあそんなわけで今の所、まだ家庭で絹をじゃぶじゃぶと洗うことは難しいので、絹の着物を着たいけどなるべくメンテ費用は抑えたい、という方の最適解としてはガード加工でしょうか。ガード加工はパールトーン加工に代表される汚れを弾く加工で、雨や飲み物の水滴などが落ちても染み込まず、ポロポロと水玉になって落ちてしまいます。非常に便利なのですが…そろそろ文字数制限に近づいてまいりましたので、来週はガード加工について詳しくお話ししたいと思っております。来週をお楽しみに。 この文章は毎週水曜日配信の当店のメルマガからの転載です。配信ご希望の方は商品購入時にメルマガ配信のチェックを外さないようにお願いいたします。