大洋酒造「大洋盛」ー日本で初めて大吟醸を市販した酒と鮭の街村上市の銘醸

大洋酒造は、新潟県村上市にある酒蔵で、地元の14の酒蔵が統合して誕生しました。日本海に面し、三面川（みおもてがわ）の伏流水を仕込み水に使用するなど、村上の豊かな自然環境を活かした酒造りを続けています。 代表銘柄である「大洋盛（たいようざかり）」は、新潟らしい淡麗辛口の味わいが特徴で、純米酒や大吟醸など多彩なラインナップを展開しています。新潟県産の酒米を積極的に使用し、伝統的な手造りの技法を大切にしながらも、新しい技術や製法を取り入れることで、品質の向上を追求してきました。 また、大洋酒造の日本酒は、村上の食文化とも深く結びついています。特に、塩引き鮭をはじめとする郷土料理との相性が良く、地元の食とともに親しまれてきました。全国新酒鑑評会や関東信越国税局酒類鑑評会でも数々の受賞歴を誇り、安定した品質と高い技術力が評価されています。 長い歴史の中で培われた伝統と、時代に合わせた革新を融合させながら、大洋酒造はこれからも村上の風土を生かした酒造りを続けています。

新潟県最北に位置する村上市は、日本海に面した歴史ある城下町です。かつて村上藩の中心地として栄えたこの町には、今もなお武家町や商人町の面影が色濃く残り、風情ある町並みが広がっています。観光地としても知られ、瀬波温泉や笹川流れ、町屋の風景など、多くの名所が訪れる人々を魅了しています。 村上市を流れる三面川は、古くは瀬波川と呼ばれ、春になると朝日連峰の雪解け水が清流となって田畑を潤します。この豊かな水源は、古くから酒造りにも欠かせない存在でした。また、春の風物詩として「町屋の人形さま巡り」が開催され、江戸時代から伝わるひな人形が約70軒の町屋に一斉に飾られ、町の歴史を感じさせてくれます。 夏には村上城址の木々が深い緑に包まれ、町は「村上大祭」の熱気に包まれます。豪華絢爛なおしゃぎり（屋台）が町を練り歩くこの祭りは、村上の伝統文化を象徴する一大イベントです。 秋が訪れると、シベリアおろしの寒風が吹き始め、三面川には鮭が遡上します。村上は古くから鮭の町としても知られ、鮭を余すことなく食す独自の食文化が発展してきました。特に「鮭の酒びたし」は村上を代表する珍味で、長期間乾燥させた鮭の旨味が凝縮された逸品として親しまれています。 冬になると、村上の酒蔵では酒造りが最盛期を迎えます。寒冷な気候と清らかな水が生み出すこの地ならではの酒は、多くの人々に愛され続けています。村上市はまた、日本最北の茶どころとしても知られ、独自の茶文化も根付いています。 さらに、村上市は美しい景観を守る取り組みを続けており、2008年には都市景観大賞「美しいまちなみ大賞」を受賞、2016年には「プロジェクト未来遺産」にも選定されました。町屋再生のプロジェクトなども進行し、歴史と現代が調和する魅力的な町づくりが進められています。 市の北部には海岸線に迫る山々が連なり、変化に富んだ地形が笹川流れの美しい景観を生み出しています。さらに、日本海の沖合約10kmには粟島が浮かび、豊かな自然が広がっています。 こうした風土と文化に支えられながら、村上市は今もなお伝統を受け継ぎ、新たな魅力を生み出し続けています。

新潟県村上市は、豊かな自然に囲まれた歴史ある城下町です。春には朝日連峰の雪解け水が三面川に流れ込み、平野の田畑を潤します。夏には町が祭り一色に染まり、秋には三面川を遡る鮭が風物詩となります。そして、冬になるとシベリアおろしの寒風が吹き、酒造りの季節が訪れます。 村上は古くから酒造りが盛んな地域として知られています。江戸時代、井原西鶴が著した『好色一代女』（1686年）には、村上の豪商が京都の遊郭に村上の酒を持ち込んで楽しんだという逸話が記されています。この時代にはすでに、村上の酒が他の地域のものより優れていると認識されていたことがわかります。 現在の大洋酒造は、こうした長い歴史を背景に誕生しました。戦前まで村上には14の造り酒屋があり、中には1635年（寛永12年）創業の蔵も存在しました。参勤交代が始まった時代から脈々と受け継がれてきた酒造りの技術は、村上の風土とともに磨かれ続けてきたのです。 しかし、昭和20年（1945年）、戦後の米不足などの影響を受け、国の企業整備令により村上管内の14の蔵元が合併し、「下越銘醸株式会社」として設立されました。当時の酒名は「越の魂」でしたが、5年後の1950年に社名を「大洋酒造株式会社」、酒名を「大洋盛」に改め、現在に至ります。 このように、大洋酒造は昭和に入って誕生した酒蔵ですが、そのルーツは江戸時代よりもさらに遡る長い歴史と伝統を持っています。村上の風土とともに育まれた酒造りの技術を受け継ぎながら、今もなお、地域に根ざした酒造りを続けています。

大洋酒造は、新潟県村上市で伝統的な酒造りを行いながら、常に進化を続ける酒蔵です。地域の素材を最大限に活かし、品質の高い酒を作り続けるその姿勢は、地元からの信頼を得ている証と言えるでしょう。 原料へのこだわり：米と水 大洋酒造の酒造りにおいて最も重要な要素は「米」と「水」です。原料米には、新潟県産の「越淡麗」を中心に、阿賀野川以北で栽培された地元の米を使用しています。新潟はコシヒカリで有名な地域であり、酒米の生産にも力を入れており、特に村上周辺では昼夜の気温差が大きいため、酒造りに適した米が育ちます。中でも「たかね錦」は全国の酒蔵から高く評価されています。 大洋酒造では、米作りと酒造りの両方に深く関わる体制を敷いており、蔵人の多くが実際に米農家としても活動しています。若手農家が酒造りに加わるなど、地域密着型で古き良き酒造りの文化が息づいています。米作りと酒造りが一体となったこの取り組みは、現在では珍しいものとなっており、その深い関わりが酒の品質に大きな影響を与えています。 水源となる「三面川」は、磐梯朝日国立公園内の雪解け水を使用しており、その水は地下16メートルから汲み上げられています。毎年厳しい検査を通過するこの水は、清酒を醸すための理想的な仕込み水として、酒に豊かな風味を与えます。 技術へのこだわり：革新と伝統の融合 大洋酒造では、伝統的な技法を守りつつ、最新技術の導入にも積極的です。特に製麹室のリニューアルや、新しい製麹装置の導入により、より高い品質を追求しています。また、旧来型の搾り方式を可能にするステンレス製搾り機を取り入れるなど、酒造りに新たな挑戦を続けています。これらの設備の改良は、現場での大きな決断を伴ったものですが、大洋酒造は常にパイオニア精神を持って革新を進めています。 多様なニーズに応える新たな商品 大洋酒造は、淡麗辛口を基盤にしながらも、消費者の多様なニーズに対応できる商品を次々と生み出しています。特に、日本酒をベースにしたリキュールなどの新商品は、その創意工夫に裏打ちされた結果です。伝統を重んじつつも、新たな挑戦を惜しまない大洋酒造は、これからも多くの酒愛好者に愛され続けることでしょう。