加賀の井酒造「加賀の井」ー前田利家も愛した新潟県で二番目に古い酒蔵

経営理念 つくる事は育むこと。基本に忠実な酒づくり 元禄十年、当時の『加賀の井』の当主は、酒は水しだいと考え、新井戸を掘った。 従来の井水よりも「酒母のゆるみよく、味のり上々吉、寒造りの使用可然」という結論を得た。 田舎酒と軽視された越後の片すみで、往時の主人は酒質の改良を心掛けた。 『加賀の井』はその頃より、水を大切に考えている。 水は昔は今も変わらない。酒造りの心意気も変わらない。 酒は生きもの。酒を愛し、手をかける程、良酒が生まれる。 朝は暗いうちから世話をし、寝ずに酒の顔色を見る夜もある。 杜氏、蔵人のこの情熱が『加賀の井』を育む。

加賀の井酒造は、新潟県で最も古い酒蔵の一つとして知られ、1650年に小林九郎左ェ門によって創業されました。以来、代々小林家が蔵を継承し、時代とともに「小林酒造店」と名乗った時期を経て、現在の「加賀の井酒造」へと改名されました。 「加賀の井」の名の由来は、石川県を治めた加賀藩主・前田利常がこの酒を愛したことにあります。以来、献上酒として名を馳せ、多くの功績を残してきました。その酒造りの礎となる水は、糸魚川のヒスイ峡周辺から湧き出る伏流水。1697年（元禄10年）、歴代の当主が水の探求を重ね、この中硬水（アメリカ硬度130ppm）を見出しました。その特性により、酒母の発酵が安定し、味わいに深みをもたらし、寒造りに最適な水とされています。 また、加賀の井酒造は糸魚川の中心地に位置し、かつては交通の要所として栄えた町並みに溶け込んでいました。歴史を物語る雁木通りの一角にあり、観光蔵として蔵を開放し、試飲施設を設けるなど、多くの訪問者がその味を堪能する場でもありました。360年以上にわたり守り続けられてきた水と伝統が、加賀の井の酒造りを支え、その味わいを今に伝えています。

加賀の井酒造が位置する糸魚川市は、新潟県最西端にあり、日本海に面した地勢を持つ。ここには、日本列島を東西に分ける糸魚川静岡構造線（フォッサマグナ）が走り、独特の地質環境を形成している。その影響で、糸魚川は世界的に貴重なヒスイの産地として知られ、古来より価値ある石として珍重されてきた。また、市全域がユネスコ世界ジオパークに指定されるほど、特異な自然環境に恵まれている。 この地の地下には、ミネラルを豊富に含む伏流水が流れている。加賀の井酒造が仕込み水として使用するのは、ヒスイ峡周辺から湧き出る中硬水で、国内では珍しい硬度130ppmの水だ。1697年、当時の当主が「酒は水で決まる」との信念のもと、何度も井戸を掘り、この水を発見した。発酵の安定性に優れ、深い味わいを引き出すこの水は、酒造りに最適とされ、今日に至るまで受け継がれている。 一般に新潟の酒は軟水仕込みによる淡麗辛口の味わいが特徴とされるが、加賀の井の酒は異なる。ミネラル豊富な中硬水を活かし、深みのある旨味とコクを持ちつつ、キレの良さを兼ね備えた味わいを追求している。この土地ならではの水が、加賀の井の個性を形作り、酒造りの基盤となっているのだ。 また、加賀の井酒造は幾度となく大火の災禍を乗り越えながらも、酒造りの伝統を守り続けてきた。その理念は「つくることは育むこと」。前例がないからこそ基本に忠実に、そして常により良いものを求めて進化し続ける。土地の恵みと歴史を受け継ぎながら、未来へと繋がる酒を生み出すため、一丸となって挑戦を続けている。

加賀の井酒造では、新潟県産米にこだわり、地元の風土に根差した酒造りを追求しています。主要な酒米には五百万石を中心に、たかね錦、山田錦、越淡麗を使用し、一部の出品用大吟醸を除き、ほぼすべての酒に県内産米を採用。将来的には100％新潟県産米への切り替えを目指しています。 この土地ならではの中硬水がもたらす「旨味」と「コク」、そして糸魚川の海産物に寄り添う「キレ」を大切にし、最適な米を模索し続けています。農家との距離が近いため、米の出来や特性を理解しながら、その年に合った最適な仕込みを行うことが可能です。新設された蔵では、米の状態をより精密に見極め、硬水との相性を最大限に活かした「加賀の井」ならではの味わいを追求しています。 また、「酒は料理とともにあるべき」という想いのもと、白身魚や南蛮海老、蟹など、日本海の恵みと調和する酒を醸造。酒が料理を引き立て、料理が酒の魅力を際立たせる—そんな理想の味わいを求め、伝統を守りながらも進化し続けています。