盆栽素材がなければここで終わってしまいます。私は全国の生産地を回り取引してもらえる先を探しました。
はじめは、盆栽を心待ちにしてくれているお客様と盆栽を好きになって一緒に働いてくれているスタッフのためにという気持ちで必死でした。
そうして全国の生産者とお会いし、話を聞く中で生産者が抱える問題を知ることになります。
それは後継者問題でした。世の中に盆栽が忘れ去られた存在になっていくなか縮小する盆栽市場で作っても売れないという状況が廃業や縮小を引き起こしていたのです。
日本の文化として盆栽に誇りをもって作ってきた生産者が泣く泣く廃業していく様を目の当たりにして私はとても悲しい気持ちになりました。
今まで盆栽に携わり販売している中で、生産者の気持ちについて深く考えなかったことがとても恥ずかし気持ちでいっぱいです。
盆栽の素晴らしさは伝えてきたつもりです。でもそこに生産者の苦労や思い、作り手の顔が見える伝え方はありませんでした。
もっと職人や生産者、作り手のことを知りたい、そして知ってほしい。新たな気持が芽生えた瞬間でした。
全国の生産地を回りしっかりとお話を伺ったことが功を奏し、香川県の生産者と新たにお付き合いすることになりました。
おかげで安定的に仕入れすることができ、売上は回復することができました。もちろん生産者の顔が見える伝え方をしっかりと意識しています。そのために生産者とのコミュニケーションは欠かせません。
香川県の高松市は松盆栽の生産量が全国1位の、世界からも評価される盆栽の里でしたが、多分にもれず後継者問題で生産量や生産者はピーク時の半分以下に減っている状況でした。
その現状を憂いているのは私達だけではありません。地元の4代目生産者北谷隆一さんも当事者の一人として頭を悩ませていました。
私は大阪から香川に仕入れにくるたびに、若手職人のリーダーであった北谷隆一さんはこれからの産地の未来をいろいろと語ってくれました。
そうして色々なお話しを聞くうちに、この盆栽の聖地高松でもっとできることがあるんじゃないかという思いが芽生えてきました。
北谷隆一さんやいろんな人のお誘いもあり2016年に大阪から香川にお店を移転する決断をしました。
生産地に拠点を移した私達は、生産者とより密になることが出来、盆栽のあらゆる情報を発信することができるようになりました。
世の中にもっと盆栽のことを伝えたい。その思いが実現することができたのです。
立ち上げ当初は、インターネットで盆栽の魅力をうまく伝えられず悔しいおもいもしました。生産者や盆栽職人、お客さまから届く声に一生懸命耳を傾け、試行錯誤を繰り返してきました。
おかげさまでお客様に恵まれ、2020年無事に盆栽妙も15周年を迎えることができました。
これからも盆栽の魅力をもっと伝えられるように、頑張りたいです。
盆栽のよさをよく知っている方にも、まだよく知らないという方にも新しい発見があったり、こんなにすばらしいものが日本の文化芸術として存在しているんだという、誇りを少しでも感じていただけたりすればうれしい限りです!