そして時は過ぎ2008年、スペシャルティコーヒー最高峰の国際品評会であるCup of Excellence ニカラグア大会の国際審査員として選ばれたのです。神奈川県の小さな自家焙煎店から選ばれるのは初めてのことでした。その時の喜びと感動は今でも忘れられません。
それはスペシャルティコーヒーの世界に足を踏み入れてからずっと夢見ていた、私にとってとても大きな目標でした。品評会は生産国に審査員が訪問して、現地でカッピング審査して、その国の当年で一番おいしいコーヒーを選ぶという国を挙げた大きな大会です。これまで埋もれていた小さな生産者も参加する事ができる画期的で公正なものです。
そこで選ばれたコーヒーはネットオークションで競売に掛けられます。世界中のコーヒーバイヤーの熱い視線が集まり、そこで落札されたコーヒー落札額の殆んどが生産者に還元されるという、生産者にとっても夢のような話です。
落札したお金で農園に設備を入れたり、車を買ったり、家を建てたりできます。また一躍、有名農園としてコーヒーの取引にも繋がる大きなチャンスもあります。私のような小さなお店のオーナーと現地の小さな生産者との交流もあります。
こうした国際品評会はスペシャルティコーヒーの合言葉である「 From Seed to Cup 〜コーヒーの種から消費者が手に持つカップまで〜」を実践して世の中に広める素晴らしいプログラムです。
そんな様々な人達の想いと願いが一杯詰まった大会に参加することはとても大きな刺激でもありますが、同時に重要な責任も感じました。この素晴らしい体験をもっと周囲の人やお客さまに伝えなければいけません。
スペシャルティコーヒーは決して一過性の流行ではありません。高品質のコーヒーが私たちの元に届くまでには、多くの人達の苦労が積み重なったものです。それから少しずつ着実にスペシャルティコーヒーの素晴らしさを伝えることを進めてきました。